梨黒斑病の臨床的實驗 : 第3報 水銀剤処理果袋のその後の試験並に水銀剤撒布の効果について
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概要
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1)水銀剤が種子消毒剤として卓抜な効果をもつことは科学的にも実用的にも久しく知られていた。然るに本剤はまた,果袋処理剤としても撒布剤としても有効なことがわれわれの実験によって明らかとなった。2)果袋用紙の処理試験によれば,二十世紀梨の果実は1000倍のウスプルン原末水溶液又はセレサン原末水溶液の処理によって,罹病率3.6〜12.5%(1951, 1952年度の各平均値)を示したのに対して,無処理袋では罹病率30.1〜23.7%を示した。3)空気伝染防除を目的とした果袋は,ウスプルンまたはセレサンで処理したものが最も有効であった。不破袋で而もウスプルン処理した果袋中の罹病果は0.7〜6.2%,平均6.6%の罹病率を示した。その感染原因は雨滴と共に果梗部から侵入した病菌によるか,或は果面上の不可視的微小の病斑をそのままにして袋掛けしたことによると考えられる。4)ウスプルンは優れた撒布剤であるが,その濃度は梨の若葉に対し2000倍,成葉に対して1000倍を超えてはならぬ。また,幼果には800倍,成熟果には1000倍を超えてはならない。なお撒布した薬液が長時間葉又は果面に停滞することがあってはならぬ。5)ウスプルン撒布に当っては展着剤の過用をつつしまねばならぬ。6)水銀剤は黒斑病防除上,銅剤や硫黄剤に匹敵し,或はそれより優っていた。その経済的撒布濃度は1000〜5000倍と考えられる。7)圃場試験の結果からすると,ウスプルンとボルドーとの混用か,交互撒布が最も成績よく,ウスプルン液或はボルドー剤の単用はこれより劣つている。これはウスプルンの流亡をボルドーと併用することにより軽減するものと思われる。8)ウスプルン液は越冬菌に対して行う冬季撒布にも適していて,1000〜800倍液を若梢や幹枝及び鱗芽に十分撒布すべきである。
- 千葉大学の論文
- 1953-03-01
著者
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