ナシ黒斑病の臨床的実験 : 第5報 ナシに対する有機水銀剤散布に関する二,三の考察
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概要
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i)薬斑は最初水浸または油浸状を呈しほぼ円形かまたはその集合体をなすものと,葉脈が褐変するため黒条状になるものとがある.ii)円形の薬斑には薬斑全体が退色斑点をなすものと,周囲のみ退色し中心部は健全であるものとの2型がある.iii)薬斑は葉表より葉裏に明瞭に見られる場合が多い.iv)葉裏で明瞭な斑点を生じても表側にまでには及ばない.又その逆の場合もあり得る.v)薬斑は概ね健全部との境が明瞭で,且つ後に凹入することが多い.vi)薬害葉は長期日経過後外観が平滑(葉の表裏共)となり撓屈に対してもろくなる.又硬化するために比較的外傷を生じ難い.vii)薬害葉は罹病性が低められる.viii)健全葉に比し葉肉の厚さが減じる.i)2,3水銀剤を発芽床に含有せしめて播種後の花粉の発芽を検したところ,収縮して不発芽が多く発芽しても数パーセントに過ぎなかった.ii)花梗,花糸から水銀を吸収せしめ,その花粉の発芽に対する影響を見たところ明瞭な事実は認められなかった.iii)開葯した後の花粉に対して散布しても花粉の発芽には殆んど支障がなかった.iv)一花房中開花度の異る未開葯への散布後の影響は廿世紀,長十郎共未開花々房の方が開花々房よりも幾分発芽率が高かったが明らかではなかった.v)圃場散布によれば一花房中開花度の進んだもの程結果率が低下し,未開花数の多い花房程高かったことから,水銀剤散布は花粉へよりも雌芯に障害を与えるものと思われた.i)冬期散布剤としてウスプルンの効果を検討し次の結果を得た.ii)室内試験ではウスプルンに浸漬した供試病斑部は水洗処理しても胞子形成抑制力が低下せず,圃場試験にも応用されることを暗示した.iii)対称としたクロンは抑制力は強いが水洗処理には比較的溶脱し易い傾向を示したが,石灰硫黄合剤と混用することにより,この欠陥は是正されたが,それでもウスプルン600倍には及ばなかった.iv)圃場散布の結果によるとウスプルンは600,1000倍区共散布期日の早晩に関係なく効果を示したに反し,クロン石灰硫黄合剤は発芽直前に限り効果が認められた.v)クロン石灰硫黄合剤の効果を期待するには発芽期に近い程有効なため,散布期日が制限される.しかも発芽期に近い程薬害が懸念される.しかるにウスプルンの薬害は冬期間は600倍でもそのおそれはなく効果についても些かも劣らない.のみならず散布時期はかなり発芽期以前でも或いはまた発芽間近であっても大差なく効果が期待された.このことは実際散布に当って労力配分上の点からも考慮に入れる要があろう.vi)両剤の反当薬剤費の比較においてもウスプルン1000倍,反当2石として約360円〜274円に過ぎず,これはクロン石灰硫黄合剤の7〜8分の1と計算される.
- 千葉大学の論文
- 1957-12-30
著者
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