トマト幼苗におけるネコブセンチュウと萎ちょう病菌とによる複合病に関する研究 : II.発病にいたる感染の経過
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概要
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ネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita (KOFOID and WHITE) CHITWOOD)と萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f. lycopersici (SACC.) SNYDER et HANSEN)とを混合接種したトマト幼苗の複合病について,その発病にいたる感染の経過を,おもに病態解剖学的な面から検討した.1.1頭の線虫が侵入した部分の根の組織では,原表皮および原皮層の機械的損傷が認められ,損傷箇所に接する細胞の細胞膜は褐変した.しかし,その部分からの菌の侵入は,接種後のいかなる時点においてもまったく認められなかった.そのことから,個々の線虫が侵入した箇所の組織の損傷は,菌の侵入門戸とは関係ないものと判断した.2.多数の線虫が集中的に侵入した根の頂端分裂組織では,線虫の侵入箇所がたがいに隣接して.原表皮および原皮層の機械的損傷が拡大され,しばしば頂端細胞の壊死がみられた.その部分には,菌が侵入して増殖し,明らかな混合感染がおこった.そのことから,多数の線虫が集中的に侵入した根の頂端分裂組織にみられる損傷は,菌の侵入を可能ならしめ,混合感染の成立に関与するものと考えられた.3.頂端分裂組織に混合感染をおこした根では,時間の経過とともに菌単独による感染が著しく拡大し,中心柱にそって菌糸の増殖が認められた.その結果として,茎部維管束における病変をもたらし,さらに地上部の萎ちょう発病を導いた.4.混合感染をおこした部位の近くに形成されたgall組織では,維管束とそれに接する虫体周辺の巨大細胞内に菌の増殖を認めた.これらの菌は,頂端分裂組織の混合感染の部位から中心柱を経て侵入したものと考えられた.5.本実験における混合感染は,地際部の不定根でもっとも顕著に認められ,それらは複合病の発病に主導的に関与した.
- 千葉大学の論文
- 1968-12-31
著者
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