トマト幼苗におけるネコブセンチュウと萎ちょう病菌とによる複合病に関する研究 : I.発病ならびに品種間差異
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概要
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トマト幼苗における,ネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita(KOFOID and WHITE)CHITWOOD)と萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f. lycopersici(SACC.)SNYDER et HANSEN)とによる複合病について,とくに品種による差異と発病の経過を検討した.1.線虫と菌の双方に感受性を示す松戸ポンデローザでは,2者を混合接種した場合,菌単独接種のときよりも萎ちょう症状が著しく増大した.しかし,線虫に感受性,菌に抵抗性を示す興津1号,および線虫と菌の双方に抵抗性を示すAnahuでは,2者を混合接種した場合でも萎ちょう症状ほまったく認められず,それぞれの抵抗性は失われなかった.2.松戸ポンデローザにあらわれる萎ちょう症状は,線虫の接種量を増すにつれてきわめて激しくなり,かつ発現の時期が早まった.しかし菌の接種量を増したときは,線虫の場合ほど顕著な増大はなかった.3.線虫と菌との混合接種による萎ちょう症状は,種々の接種方法のなかで,2者を同時接種した場合に,もっとも激しくおこった.2者を時差接種した場合は,接種の順序を変えることによって発現の様相が異なった.すなわも,線虫を接種して16日後に菌を接種した場合の,最終調査時における萎ちょう発病率が55%であるのに対して,その道の場合は100%であった.4.線虫の接種時点を5回に分けて菌と混合接種した場合には,線虫を一括して菌と混合接種したときより萎ちょうの発現がややおくれ,病勢の進展も緩慢となった.また同じ接種方法で菌の接種時点をずらすことにより,萎ちょう症状の発現の様相が異なった.すなわち,菌より先に線虫の分割接種を行なった場合は萎ちょう発病率が低く,その逆の場合は高まった.5.混合接種により萎ちょう症状が急激におこると,根こぶの形成が抑制され,根こぶ指数は低下する傾向を示した.その場合,土壌中の線虫密度も低まった.6.混合接種を行なっても萎ちょう症状の発現がおそく,発病率の低い接種区では,土壌中の線虫密度が増大する傾向を示した.なかでも菌より先に線虫を分割接種した区の土壌中の線虫密度は,線虫を単独で分割接種した区よりも1.6倍高まった.7.M.incognitaとF.oxysporum f.lycopersiciとによる複合病の病徴としては,根こぶと萎ちょう症状とがそれぞれにあらわれ,とくに萎ちょう症状の激化が目立つ.したがって,この場合の複合病の特徴は,病徴の質的変化によるものではなく,萎ちょう症状の助長,拡大による発病の量的変化にある.
- 千葉大学の論文
- 1967-12-31
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