書字学習困難児の発達特性と学習支援
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概要
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書字学習の初期にある子どもでは,字形の崩れや異字などの誤字が頻繁に観察される。このため,少なくとも組織的な文字学習が開始された後には,新たな文字の学習場面において,できる限り誤学習がなされないようにするための支援が望まれる。また,誤学習した文字に対しては,文字の誤りを自ら発見し,それらを修正できるような自己修正機能の獲得を促すための支援が求められる。さらに,特別な支援を必要とする子どもたちの中には,書字学習そのものに対して苦手意識を持つ子どもが多いことから,支援の際には,学習に対する動機付けの観点からも配慮が必要である。そこで本研究では,小学校特殊学級に在籍する書字学習に困難を示す知的障害児童を対象として,3年生から6年生までの4年間に51回の個別支援場面を設定し,誤学習を避けるための支援策,及び自己修正機能の獲得を促すための支援策について検討した。また,対象児の認知特性として,短期記憶に優れるものの,同時処理能力に相対的なつまずきがみられ,また部分と全体の把握に困難がみられたことから,これらの特性を考慮した課題場面を設定するようにした。さらに支援実施時には,対象児と支援者ができる限り対等の立場にたって課題を遂行できる状況を設定し,学習に対する動機を高めるように配慮した。その結果,これらの支援場面は単なる文字の「書き方」の学習場面ではなく,文字の「使い方」の学習場面として機能し,対象児の平仮名,片仮名,漢字の学習過程において,書字結果に対する自発的な確認・修正行動が徐々に生起するようになっていった。In children who exist in early stages of handwriting learning, miswritten letters are observed frequently. For this reason, in the learning of new letters, the support for avoiding incorrect learning is desired, and the support for getting a self-correction function is called for. Furthermore, since those children have weak consciousness to the handwriting learning itself in many cases, the consideration about the motivation to learn is required. In this study, 51 individual support sessions were set up for four years from third-grade to sixth-grade for a child with intellectual disability in an elementary school special class. Since many mirror-writing letters were observed in this child, it inquired focusing on the remedy. Consequently, in the learning process of hiragana letters, katakana letters, and Japanese kanji characters, spontaneous check/correction action to a handwriting result came to occur gradually. Moreover, these support sessions functioned not as the learning session of "how to write" but as a learning session of "usage" of letters and characters.
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