北太平洋産サラガイ類(軟体動物 : 二枚貝綱)の分類と分布
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概要
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サラガイ類は, 本州中部からアラスカにかけて棲む, 長楕円形の厚い殻を持った大型のニッコウガイ科二枚貝である。歯板には, 両殻とも2個の小さな主歯と1個の大きな前側歯が有る。これまで, サラガイ類はPeronidia DALL, 1900に分類されてきたが, Peronidiaの模式種Tellina albicans GMELIN, 1791は, 地中海からアフリカ西岸に棲む, 小型, 薄質の殻を持つ種で, 前側歯を欠く。北太平洋のサラガイ類に対しては, サラガイを模式種とするMegangulus AFSHAR, 1969を当てることが妥当である。 日本では, サラガイ類をサラガイMegangulus venulosus(SCHRENCK), アラスジサラガイM. zyonoensis(HATAI & NISIYAMAM), べニサラガイM. luteus(WOOD)の3種に分けてきたが, DALL(1900), GRANT &GALE(1931), ABBOTT(1954), BERNARD(1983)などは, サラガイ, アラスジサラガイを同種, サラガイ, ベニサラガイを同種など様々に主張してきた。科学博物館(河村コレクション他), 東北大学などの標本に基づき, 上記3種を再検討した結果, 次の通り3種の区別が可能であることが明らかとなった。 Megangulus venulosus (SCHRENCK, 1862)サラガイ 殻は楕円形ないし亜三角形, 厚質。殻表には規則的な斜めの彫刻と細かい放射状の割れ目が顕著。前側歯は大きく, 内面は橙色。樺太北部から銚子(太平洋), 鳥取県(日本海), 朝鮮半島北東岸。 Megangulus zyonoensis (HATAI & NISIYAMA, 1939)アラスジサラガイ 殻は長楕円形, 厚質。殻表の斜めの彫刻はサラガイよりも密で, 鋭い。前主歯は半ば靱帯に埋もれ, 前側歯はやや強い。内面は桃色, 又は白。カムチャッカ半島から岩手県(太平洋), 石川県(日本海), 朝鮮半島北東岸。 Megangulus luteus (WOOD, 1828)ベニサラガイ 殻は楕円形, 薄質。殻表には斜めの彫刻を欠き, 普通は放射状の割れ目も欠く。前側歯は弱く, 内面は赤紫色。アラスカ, 北千島, 樺太, 北海道, 朝鮮半島北東岸, 朝鮮海峡。 なお同属には北米西岸に1種M. bodegensis (HINDS, 1845)が分布する。
- 国立科学博物館の論文
- 1988-12-01
著者
-
五嶋 聖治
北海道大学水産学部
-
松隈 明彦
国立科学博物館動物研究部
-
桑原 康裕
北海道立稚内水産試験場
-
松隈 明彦
国立科博・動物
-
五嶋 聖治
北大・水産
-
桑原 康裕
北大・理・地質
-
五嶋 聖治
北海道大学大学院水産科学研究科
-
松隈 明彦
国立科学博物館
-
松隈 明彦/五嶋
国立科学博物館動物研究部/北海道大学水産学部/北海道立稚内水産試験場
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