日本産タマキガイ科二枚貝 IV : 南西日本産タマキガイ属の 1 新種
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概要
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コタマキガイは琉球列島各地に見られ, その学名は従来からGlycymeris spurca (Reeve, 1843)があてられてきた。Reeve (1843), および, Lamy (1912)に依れば, G. spurcaは紫褐色或いは灰褐色の殻表面に, 多くの殻皮細条(periostracal striations)のある低い肋を持つと言われている。これに対してコタマキガイは, 一般に殻皮細条のみで肋を欠き, 殻の色は褐色で一様なものから, 白地に橙褐色の斑点, 或いは細かいトドロキガイ様の紋様を有するもの, 更にはほとんど純白のものまで多様性に富んでいる。これらの点から, コタマキガイは, Reeve (1843)のG. spurcaにはあたらず, 既知の種にも該当するものがないため, ここに新種Glycymeris shutoiとして記載する。コタマキガイは殻後端が角張り, しばしばこの部分が白彩される。これらの特徴はソメワケグリに類似するが, 靱帯面が浅い靱帯溝(ligamental groove)で刻まれ, 殻表に低い肋を欠くことで, ソメワケグリとは完全に区別できる。宮古島与那覇前浜で採集された同時同所の集団標本によれば, 上記の定性的な形質でコタマキガイとソメワケグリの2グループに分けられた標本は, 殻の相対的な長さに関する相対成長変異, および殻高の単純比などで表現された個体変異において, 正規分布型の頻度分布を示し, 両グループがそれぞれ単一のポピューレーションをなすことがほぼ明らかになった。コタマキガイはヤスリメタマキガイとは奄美大島, 沖繩本島などで同所的分布を示し, 肋の有無等で区別が可能な別種である。オーストラリア東岸のスズメノタマキガイ(奥谷新称)Glycymeris fringilla (Angas, 1872)はコタマキガイよりも腹縁鋸歯の数が多く, 靱帯溝が少なく, 殻表のカラーパターンも異なる。現在までに知られているコタマキガイの分布は, 奄美大島, 沖繩本島, 伊是名島, 宮古島などである。肥後(1973), および波部(1977)は, 台湾をコタマキガイの分布域としてあげているが, 筆者はまだ標本を確認していない。
- 1981-04-15
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