伊豆半島南岸からドレッジにより採集された興味ある貝類数種について
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概要
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昭和56年10∿11月, 伊豆半島南東岸付近からドレッヂによって得られた貝類の中から興味ある21種を選んで報告する。 ヒカリシタダミ Microgaza fulgens : 原記載は五島沖であるが相模湾及びその周辺の50-100m 付近に普通。通常ヤガスリシタダミ M. ziczac と同所的分布をする。 ニヨリエビスガイ Tristichotrochus problematicus : 黒田他 (1971) により相模湾東部海域から報告された種。 キシュウベッコウタマガイ Lamellaria kiiensis : 死殻1こであるが, 本邦既知のベッコウタマガイ類中, 相模湾に分布するのは本種のみの様である。 ヒナノカムリボラ Murexsul cirrosus : 材料中最も多いアッキガイ科の種であるが, 色彩変異に富むばかりでなく, 螺助が殆ど鱗片状とならない標本まである。 クロスヂトクサバイ Phos nigrolineatus : 採集された標本はいずれも未成殻であるが, コトクサバイ P. varicosus に比べ螺塔は高く褐色螺条が極めて明瞭である。コトクサバイも同所的分布をする。 ムギヨフバイ Cyllene pulchella : 熱帯太平洋種で, 従来, 相模湾からは知られていなかった。 ヒダトリヨフバイ Zeuxis subtranslucidus : 波部 (1961) によって Z. hayashii の名で遠州難から記載されたが, インド洋から熱帯西太平洋に広く分布する種であることが明らかとなった。 ナガイモフデガイ Pterygia japonica n. sp. : 吉良 (1959) は本種を喜界島化石から記載された P. elongata にあてていたが, 本材料から発見された1標本と天草牛深から採集された1標本とを研究の結果, 別種と認められ新種として記載した。 コビトオトメ Microvoluta hondana : 横山 (1922) により武蔵野層上部から記載された化石種の現生標本である。所属はもとフデガイ科におかれていたがフデヒタチオビガイ科に移される。 ミウライモガイ Parviconus tuberculosus : 4地点からこの小型イモガイ類が採集され, 下田沖60∿120m 付近には普通であることが判った。 カンダイトカケガイ Epitonium kandai : エドイトカケガイに似るが, 縦肋肩部が僅かに突出し後方に反る点で異なっている。 ウスムラサキクレハガイ Papyriscala tenuilirata : 波部 (1961) が遠州灘からチャイロクレハガイ P. castanea として記載した貝であるが, 相模湾にも分布する。 チヂミナワメグルマ Claraxis aspersus : 小型のクルマガイで, 稀にしか採集されておらず, 本材料中も2個の死殻が発見されたにすぎない。 ミタマキガイ Glycymeris imperialis : 概形ベニグリガイ G. rotunda に似ているが本種とベニグリガイでは水深, 底質, 随伴群集が全く異なる。学名は G. albolineata をあてるべきだという意見もあるが, 後者は点刻が顕著で, 殻皮毛条が密で, 旦つ閉殻筋痕が縞状となる点において本種とは異なる。 ユキゾラホトトギスガイ Amygdalum soyoae : 陸棚帯上部の砂底に棲み, 深海性の近縁種ヌリツヤホトトギスガイ A. watsoni と棲息深度を著るしく異にする。 シロチョウウグイスガイ Pterelectroma zebra : PRASHAD (1932) が tomlini という別種を創設したが, 本採集品中には両型が出現し, 色彩模様のみでは2種に分けることは出来ないことが明らかである。 ワタゾコツキガイ Notomyrtea soyoae : 原記載での分布は九州西方から日本海西部の範囲であったが, 太平洋沿岸は相模湾まで知られる。 ウツギノハナガイ(新称) Wallucina izuensis n. sp. : 本属にはこれまで日本近海からはチヂミウメノハナガイ(ナシノハナガイ) W. lamyi しか知られていなかったが, 本種は前域が比較的長いこと, 殻表には成長輪脈のほか, 微細な放射状彫刻のある点で異なる。 カノコシボリコウホネガイ Meiocardia moltkiana : 熱帯西太平洋に汎く分布する種でフィリピン型を sanguineomaculata として区別されているが, 多くの標本を見るとその区別はむずかしい。 ウズマキゴコロガイ Verticordia deshayesiana : 本種は熱帯西太平洋ばかりでなく, 中央太平洋(ハワイ)にまで分布する。 ダイオウスナメガイ Cetoconcha japonica : 本種の幼若個体と見られるが, 殻は甚だ薄く, 概形も成体と幾分異るので, 別種の可能性もある。
- 国立科学博物館の論文
- 1982-12-01
著者
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