西南日本産ハスメヨシガイ属, ハナヤカマスオガイ属, スダレヨシガイ属(シオサザナミガイ科二枚貝)の分類と分布
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概要
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シオサザナミガイ科は, 明瞭な歯丘を持ち, 側歯はごく弱いか, 欠くニッコウガイ超科の二枚貝である。殻の前後端は開口し, 套線湾入はほぼ水平で深い。小さな科であるが, 南西日本産の種については極めて興味深い分布の型を示すもの, 分類学上の混乱が見られるものがあるので, ここに再記載し, 整理・検討する。紀伊半島から四国へかけて分布するクロダヨシガイは, 殻前・中部の斜めの彫刻が後部の放射肋と斜交する点で, インド-西太平洋の熱帯域に広く分布するサカライマスオガイに酷似する。しかしながら, 日本産のものは殻が前後に長く, 後端がすぼまり, 殻表の彫刻が弱い点でサカライマスオガイと区別できる。このため, クロダヨシガイはサカライマスオガイの分布域の北東周縁部で出来た地理的亜種と考える。同様の関係は, オキシジミとタイワンオキシジミ, シオヤガイとミナミシオヤガイなどでも指摘されている。従来, 日本産のハナヤカマスオガイ属は, ハナヤカマスオガイ1種から成ると考えられてきたが, 殻が厚く, 殻表に幅の広い放射色帯と細かいジグザグ模様が有り, 後部に顕著な板状の輪脈を持つハナヤカマスオガイ Dysmea oriens (DESHAYES), 及び殻は平滑で薄く, 輪郭のはっきりしない白斑を一面に散らし, 左殻殻頂付近に歯状の突起を持つユキゾラマスオガイ(新称) Dysmea occidens (GMELIN) の2種があることが分かった。スダレヨシガイ属 (Kermadysmea POWELL, 1958)は, これまでスダレマスオガイ(亜)属と呼ばれ, スダレマスオガイ及びスダレヨシガイの2種が置かれていた。しかしながら, スダレマスオガイは明瞭な歯丘を持つ点ではシオサザナミガイ科の特徴を有するが, 殻の前後端に開口を欠き, 右殻の前後側歯, 斜め上方を向いた套線湾入を持つことから, ニッコウガイ科へ移し, 新属スダレザクラガイ属 Aenigmotellina n.gen. を設けることを提唱する。これに伴い, Kermadysmea 属の和名をスダレマスオガイ属からスダレヨシガイ属へ改称する。スダレヨシガイはこれまで, ケルマデック諸島, 沖縄群島及びレユニオンだけから知られている。半円を連ねたような輪肋を持った, シオサザナミガイ科の特異な二枚貝である。ケルマデック産, 沖縄産の現生標本, 並びに喜界島の更新統琉球石灰岩産標本を記載する。
- 国立科学博物館の論文
- 1989-12-01
著者
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