エゾボラモドキの左旋個体とその歯舌形態
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概要
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通常,貝殻の螺旋は右巻きであるが,時折左巻きになることがある。古くはLinnaeus (1747)が図示したタマキビガイ科に属する個体で,後にLittorina littorea (Linnaeus, 1758)ヨーロッパタマキビのレクトタイプとして指定された左巻き個体の例がある。エゾバイ科貝類の螺旋は,Pyrulofusus deformis harpa (Morch, 1858)タテゴトナシボラ, Neptunea laeva Golikov, Goryachev & Kantor, 1987やN. contraria (Linnaeus, 1777)サカマキエゾボラ等の数種類を除いて,通常右巻きである。しかし,本科においても通常は右巻きの種類で,左巻きの個体が現れることが報告されている。例えばLinnaeus(1747)が図示したエゾバイ科の一種や,近年ではBeringius polynematicus Pilsbry, 1907ナガバイ(樋口, 2006), Buccinum isaotakii Kira, 1959シライトマキ(山崎, 1999), B. striatissimum Sowerby III, 1899エッチュウバイ(鈴間・波部, 1980), N. polycostata Scarlato, 1952エゾボラ(樋口, 2006), N. intersculpta (Sowerby III, 1899)エゾボラモドキ(黒田, 1961; 伊藤, 1967; 山崎, 1999; 佐々木, 2002; 酒井, 2004; 樋口, 2006), N. behringiana (Middendorff, 1848)コブシエゾボラ(Golikov, 1963), N. arthritica (Bernardi, 1857)ヒメエゾボラ(千葉・小菅, 1980)に報告例がある。今回,著者の一人である水澤は,2006年1月,北海道から新潟に入荷したエゾボラモドキの中から逆旋個体を1個体発見した。そこで,本稿では,その採取報告と,著者らが知る限り,これまで報告例がないエゾバイ科巻貝の左巻き個体の歯舌について,その詳細を報告する。今回採取された個体の貝殻標本と軟体部標本については北海道大学水産学部水産資料館に収め, M-1721の番号を与えた(MはMolluscaを意味する)。
- 2006-10-10
著者
-
仲谷 一宏
北海道大学大学院水産科学院海洋生物学講座魚類体系学教室
-
五嶋 聖治
北海道大学水産学部
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山崎 友資
北海道大学大学院水産科学研究院
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五嶋 聖治
北海道大学大学院水産科学研究科
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仲谷 一宏
北海道大学大学院水産科学院
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仲谷 一宏
北海道大学
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五嶋 聖治
北海道大学大学院水産科学研究院
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