矯正治療に伴う歯根吸収のリスクの診断法に関する研究(第 2 報) : 矯正治療中に歯根吸収を起こした上顎中切歯歯根の治療前の状態に関する疫学的調査

概要

論文の詳細を見る
矯正治療に伴う歯根吸収のリスクを治療前の段階で診断する方法をみつけだすことを目的として, 矯正治療中に上顎中切歯に重篤な歯根吸収を発現した33症例の上顎中切歯の歯根の治療前の歯根形態, 歯根吸収像の有無, 前歯部の咬合状態について検索を行った.その結果, 以下のような知見が得られた.1. 歯根形態は, 歯根吸収が軽症であった群(軽症者群)の約94%が正常であったのに対して, 重症であった群(重症者群)では約36%に異常が認められた.2. 軽症者群の治療前の歯根形態はその3%が短根状, 他の3%が屈曲状であった.一方, 重症者群では短根状が15.2%, ピペット状が15.2%, 短根状でピペット状が6.1%であった.3. 治療前に歯根吸収が認められたのは, 軽症者群では9.1%, 重症者群では36.4%であった.4. 重症者群で歯根吸収を認めた症例の83%が外傷性咬合あるいは舌癖を有していた.5. 治療前に歯根に異常形態もしくは歯根吸収像を認めたのは, 軽症者群では12.1%だったのに対して, 重症者群では51.5%であった.以上の結果より, 矯正治療前の歯根の異常形態所見が, 治療による歯根吸収の発現と密接に関連していることが示唆された.
日本矯正歯科学会の論文