骨振動解析による下顎骨骨質測定システムの開発とその臨床応用
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概要
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本研究の目的は, 骨粗鬆症のスクリーニングとして研究されている骨振動解析法を下顎骨に応用し, 非侵襲的な下顎骨骨質測定システムの開発とその臨床応用の可能性について検討することである.本研究で開発したシステムは, 圧電素子(ピックアップセンサー)にオトガイ部を乗せ, 額部を自動的に叩打することにより下顎骨に振動を与えてその骨硬度を評価し, 骨の成熟度や内部特性等を推測しようとするものである.測定原理は, オトガイ部で得られた信号をセンサーにより検出し, 時間軸における波形を取り込み, それを高速フーリエ変換(FFT)することで周波数分析を行う.そこで求められる時間軸波形における第一ピーク値と第二ピーク値のそれぞれの振幅, および周波数分析されたパワースペクトル波形上でのピーク値を示すピーク周波数(fp)を用いて固有振動数(fc)を求めるものである.これらの測定は, ハンドヘルド FFTアナライザとパーソナルコンピュータを用いることで自動的にデータの採得と周波数分析およびfcの計算が行われる.本システムを用いて下顎骨についてfcの測定を行い, 身長, 体重, 骨量などの全身成長や下顎骨形態との関連などについて検討した.その結果, fcは身長, 体重, 手骨骨量と有意な相関を示さなかった.しかし, 思春期ピークを過ぎた女子においてセファロ計測値では上・下顎骨の前後的位置関係を示す項目と有意な相関が認められた.顔面パターンによる比較では, 前後的にはskeletal class III, 垂直的にはshort faceでfcが高値を示す傾向が認められた.以上の結果から, 本システムによって測定されるパラメータは, これまでの測定法では得られない顎骨の形態や骨質を反映する独自の指標になりうることが示された.今後, さらに測定精度を高めることによってX線を用いない唯一の顎骨評価システムとして, 顎骨の骨成熟段階の評価, 顎骨残余成長量予測の指標, 顎矯正外科手術後の治癒の判定, 矯正治療の際の歯の移動に対する抵抗性の評価などに応用できるものと考えられた.
- 日本矯正歯科学会の論文
著者
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三谷 英夫
東北大学 大学院歯学研究科 発達加齢・保健歯科学講座 顎発達・咬合形成学分野
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三谷 英夫
東北大学歯学部
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三谷 英夫
東北大学歯学部発達加齢・保健歯科学講座顎発達・咬合形成学講座
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佐藤 亨至
東北大学歯学部歯科矯正学講座
-
三谷 英夫
東北大歯・矯正
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佐藤 亨至
東北大学大学院歯学研究科 口腔保健発育学講座 顎口腔矯正学分野
-
三谷 英夫
東北大学歯学部矯正科
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