マラリヤ感染ラット血液の病態生理学的所見
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概要
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実験的マラリャ感染ラットの急性および慢性期における一般血液・血清諸性状の経時的動態について検討した.35匹のウイスタ-spr雌ラット,体重180±7g,出生日の差1週間以内のものを,環境および飼育条件を一定にして実験に供した.感染に用いたマラリャはPlasmodiumberghei(berghei)である.ラット1匹当り生理食塩液0.5ml中にマラリャ含有赤血球ほぼ4×107個を含む浮遊液を腹腔内に接種した.そして,感染前と,感染後3日および1,2,3,5,7,8週目の8回,おのおののラットの尾端から約0.5mlずつ採血し,諸検査を行なった.検査項目は,(1)一般血液検査(赤・白血球数,Ht,Hb,網赤血球数,赤血球抵抗,白血球百分率)と血球超生体,酵素,鉄などの染色,(2)血清諸成分(鉄,銅,コレステロール,ビリルビン,総蛋白および蛋白分画),(3)血清諸酵素(GOT,GPT,LAP,LDH,alka11nephosphatase,cholinesterasc)と,(4)病理組織検査であった・その結果,末梢血液では,感染14日田こ重篤な貧血(大球性高色素性)を認めたが,以後漸次感染前値に復した.赤血球中マラリャの出現は感染後14日目に,網赤血球は感染後21日目に,それぞれ最高値を示し,以後漸次減少した,また,感染後単球が著増し,それらの多くは空胞を有して退行性変化を示した.骨髄内Mye101d/Erythroid細胞比では,感染後21日口を頂点とするErythroid増加と,形質細胞の相対的増加が観察された.血清諸成分では,LDH,GOT,GPTおよびビリルビンが感染後著増し,以後漸次減少する傾向を示した.血清鉄は感染直後減少するが,以後著しい変化は認められなかった.血清蛋白では,感染後アルブミンおよび総蛋白が減少,以後漸増するが,γ-グロプリンは感染後増加した.病理組織学的には,感染初期,肝の毛細血管内皮細胞の腫大と,壁着性に色素食食像を認め,牌髄における細網内皮細胞の増数と円形化,そして旺盛な造血像を観察した.感染後8週目に至っても,肝および牌内の色素食食はきわめて著しいが,造血像はほとんどなく,牌濾胞も正常に近く復した.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1973-10-25
著者
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鈴木 直義
帯広畜産大学原虫病分子免疫研究センター
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鈴木 直義
帯広畜産大学家畜生理学教室
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鈴木 直義
帯広畜産大学
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PIEKARSKI Gerhard
ボン大学医学寄生虫病研究所
-
JANSSEN Paul
ボン大学医学寄生虫病研究所
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VISWANATHAN R.
ボン大学医学寄生虫病研究所
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