無精子症を伴う前立腺肥大症犬の血中estradiol-17β値

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本学動物病院に来院した4-7歳の前立腺肥大症(BPH)犬22頭の精液性状検査を実施した結果,4頭が無精子症であった.造精機能を有するBPH犬18頭の末梢血中estradiol-17β(E_2)の平均値(17.3pg/ml)は,正常雄犬5頭のその値より高く,testosterone(T)の平均値(1.7ng/ml)は,逆に低かった.さらに,無精子症大の血中E_2およびTの平均値は,造精機能を有する犬のそれらの値に比較して,それぞれ有意に高値(27.3pg/ml)(P<0.01),有意に低値(1.1ng/ml)(P<0.05)を示した.そこで,BPHおよび無精子症と血中E_2値との関連性を調べる目的で,3-5歳の正常雄犬5頭に,estradiol benzoate(E_2B)を5μg/kg用量で,3日間隔,10回筋肉注射した.その投与前および投与後30日で,精巣および前立腺のサイズ計測とバイオプシーを実施した.E_2B投与開始後30日で,末梢血中の平均T濃度は,投与前の約172に低下し,精巣容積は,投与前の平均88%に,また,精細管内の精母細胞,精子細胞および精子数は有意に減少した(P<0.01,0.05).しかし,前立腺容積は,平均130%に増加し,腺腔の拡張が観察された.また,前立腺上皮の高さは,減少した.これらの結果から,雄犬では,長期間の高濃度の血中E_2によって,BPHとともに重度の造精機能障害が誘発される可能性のあることが示唆された.
社団法人日本獣医学会の論文
2001-04-25

無精子症を伴う前立腺肥大症犬の血中estradiol-17β値

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