犬における実験的片側性潜在精巣作成後の陰嚢内精巣機能

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犬における片側性潜在精巣の対側精巣機能に対する影響を調べる目的で,雄ビーグル8頭に対して,右側精巣の腹腔内停留手術を実施した.この手術時およびその後52週で,左右の精巣バイオプシー,精巣静脈血採取および末梢血採取を行った.その精巣組織の一部で組織学的観察を行うとともに,残りを用いて精巣トランスフェリン(Tf)濃度の測定を実施した.また,血中testosterone(T),estradiol-17β(E_2)およびluteinizing hormone(LH)値を測定した.さらに,精液の採取および性状検査を行った.片側性潜在精巣の手術後52週において,潜在精巣では精子形成が消失し,対側精巣の精細管内の各種細胞数は明らかに減少した.しかし,セルトリ細胞数の有意な減少はなかった.さらに,両側の精巣Tf濃度も減少した.片側性潜在精巣作成後48-52週における総精子数の平均値(194×10^6)はその手術前の値(510×10^6)の1/2以下に減少した.術後52週における潜在精巣側の精巣静脈血中Tの平均値(51 ng/ml)は,術前のその値(91 ng/ml)に比較して有意に低く(P<0.05),逆にE_2値(80 pg/ml)は,術前のその値(51 pg/ml)に比較して有意に高かった(P<0.05).末梢血中LH値は,低下した.対側精巣静脈血中TおよびE_2は,ともに低値となった.これらの成績から,犬では実験的な片側性潜在精巣によって,対側精巣の内分泌機能および造精機能が阻害されることが判明した.とくに,対側精巣の造精機能の変化は,Tf濃度の減少が示したセルトリ細胞の機能低下と密接な関連があると推察された.
社団法人日本獣医学会の論文

犬における実験的片側性潜在精巣作成後の陰嚢内精巣機能

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