プロテアーゼによる犬精子表面のレクチン結合糖蛋白質の消失およびハイパー・アクティベーションの誘起(臨床繁殖学)

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蛋白質分解酵素による犬精子表面の糖蛋白質の消失と受精能獲得の関連性を調べた.発情期の犬6頭,発情休止期の犬5頭および無発情期の犬5頭から摘出された子宮角および卵管の灌流液中プロテアーゼ(PR)濃度を測定した.また,PR1μg/ml,5μg/ml添加およびPR無添加(コントロール)のイーグルMEMで,犬10頭の射精精子を4時間培養した後,4種類のFITC-レクチン(Con A,PHA-E,PNA,WGA)を用いて,精子表面の糖蛋白質の蛍光染色を行った.さらに,培養後の精子のハイパー・アクテイベーション誘起率(%HA)およびアクロソーム・リアクション誘起率(%AR)を調べた.発情犬の子宮角および卵管灌流液中PR濃度は,それぞれ平均1.00μg/mlと5.95μg/mlであり,両値に有意差が認められた(P<0.01).発情休止期および無発情期の犬の子宮角・卵管灌流液中PR値は,いずれも0.05μg/ml以下であった.培養前の全ての精子の頭帽または頭部全体がそれぞれのFITC-レクチンに強く染色されたが,培養後における蛍光染色された精子の割合は,減少した.とくに,PR5μg/ml添加MEM中の4種のレクチン結合精子の平均%は,コントロールMEM中の精子に比較して有意な減少がみられた(P<0.05または0.01).また,PR添加MEMで培養した精子の活力および%HAの平均値は,コントロールMEM中のそれらの値と比較して高値を示し,とくに,PR5μg/ml添加MEM中のそれらの値は,有意に高かった(P<0.01).しかし,%ARに関しては,差はみられなかった.これらの成績から,発情犬の卵管分泌液中のPRの作用により,犬精子表面のいくつかの糖蛋白質が消失して,HAが高率に誘起されることが推察された.
社団法人日本獣医学会の論文
2004-09-25

プロテアーゼによる犬精子表面のレクチン結合糖蛋白質の消失およびハイパー・アクティベーションの誘起(臨床繁殖学)

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