コナダニ類のフェロモン研究 II ケナガコナダニにおける警報フェロモンの存在とその分泌腺
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概要
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ケナガコナダニTyrophagus putrescentiae (Schrank)の警報フェロモン, 蟻酸ネリル, (z)-3,7-dimethylocta-2,6-dien-1-ol formateの役割の確認として毛筆あるいは振盪による刺激の効果を調べた。また分泌腺の同定を行った。ダニ集団を毛筆で軽く刺激した場合と自然に静置した場合の両法で条件付けした濾紙片を生物試験すると, 刺激した場合の濾紙片だけがフェロモン活性を示した。そこでPorapak Q法を用いて両条件(刺激区は手で1時間振盪しつづけた)で発散される成分を吸着捕集し, ガスクロマトグラフ法で蟻酸ネリルを直接定量した。その結果刺激区で平均100倍多くの蟻酸ネリルの放出を認めた。Faure氏液で封入後, 1週間以上経過したダニ標本では側胞腺(または油腺)が黄∿黒色に着色する個体が観察できる。そこであらかじめ刺激した場合と静置の場合の両個体群をFaure氏液で封入し, 側胞腺の着色度を調べた。静置区の着色度が約4倍高く評価された。別に蟻酸ネリルをFaure氏液と混合すると蟻酸ネリル層が黄色化する事実があり, 警報フェロモンは側胞腺から分泌されると推定した。さらに確認するため蟻酸ネリルが黒褐色に呈色するTollen's試薬で分泌腺の染色を試みた。1%硝酸銀含有3%寒天液に50℃付近でダニを封入し, 固化後濃アンモニア水で弱アルカリ性として冷所に2日間放置した。この方法で封入されたダニの観察の結果, 側胞腺が褐色に着色することを観察した。以上の結果, 蟻酸ネリル-警報フェロモン-は刺激を与えられると体外に発散され, その分泌腺は側胞腺(または油腺)と結論した。
- 日本衛生動物学会の論文
- 1979-12-15
著者
-
深海 浩
京都大学農学部
-
松本 克彦
東女医大・総研 国環熱
-
桑原 保正
京都大学農学部農薬研究施設
-
和田 芳武
東京女子医大
-
石井 象二郎
京都大学農学部 農業研究施設
-
深海 浩
京都大学農学部農薬研究施設
-
松本 克彦
東京女子医大:総合研究所
-
石井 象二郎
京都大学農学部付属農薬研究施設:(現)京都大学名誉教授
-
深海 浩
京都大学農薬研究施設
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