ササゲの耐乾性に関する研究 : 第2報 水ストレス下における葉の水分調節機能と光合成能の特性に関する.ササゲ, ダイズ, インゲン, リョクトウ間の比較
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概要
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水ストレス下におけるササゲの水分調節機能と光合成能の特性を明らかにするため, ササゲ, ダイズ, インゲン, リョクトウにおける, 水ストレスが気孔および光合成器官の活性に及ぼす影響について調査した.水ストレスは, 土壌水分を減少させることによって調節し, 植物体内の水分状態の指標として, 木部の水ポテンシャル(ψ_x)を用いた.ψ_xの変化に伴う光合成速度, 蒸散速度, 葉内CO_2濃度の変化を測定した.また, 土壌水分の低下に伴う浸透ポテンシャルの変化についても測定した.これらの実験により以下の結果を得た.いずれの供試作物においても水ポテンシャルと蒸散速度の関係は, 次のスウィッチ・ファンクション式E=E_<max>/{1+(ψ_x/ψ_<1/2>)^n}(E;蒸散速度, E_<max>;蒸散速度の最大値, ψ_x;木部の水ポテンシャル, ψ_<1/2>;E_<max>の1/2における水ポテンシャル, n;定数)で表すことができた.インゲンでは光合成器官の活性低下が高いψ_xから起こるため, 光合成効率はわずかな土壌水分欠乏でも低下した.また, Eは低いψ_xでも完全に停止することはなかった.ダイズは浸透調整機能によって, ψ_xが-1.0MPa以上では光合成器官の活性を高く維持したが, 継続的な土壌乾燥下では著しくψ_xが低下した.ψ_xが-1.0MPa以下に低下すると, 光合成効率は低下したが, Eはψ_xが-2.5MPaに低下しても完全には停止しなかった.つまり, きびしい水ストレス条件下では, インゲンとダイズは土壌有効水を非効率的に消費することを示している.一方, リョクトウの光合成効率は高いψ_xから低下するが, Eは-0.7MPa以下で急速に減少した.ササゲの気孔閉鎖と光合成器官の活性低下はほぼ同じ低いψ_xで起こるため, 光合成効率は気孔が閉鎖し始めるまでは常に高く維持された.また, ササゲは浸透調整機能を欠くため, Eは高いψ_xで急速にかつほぼ完全に停止し, そのことによってψ_xを高く維持した.つまり, ササゲとリョクトウは土壌と植物体内の水分を保持する能力に優れ, インゲンやダイズよりも長く干ばつ条件下で生存できるものと結論した.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 1992-12-01
著者
-
伊谷 樹一
宇都宮大学
-
宇都宮 直樹
京都大学農学部
-
重永 昌二
京都大学農学部
-
重永 昌二
滋賀県立大学
-
伊谷 樹一
宇都宮大学農学部
-
伊谷 樹一
Graduate School Of Asian And African Area Studies Kyoto University
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