ライコムギの播種期による分枝穂の出現頻度の差異とその型
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究はライコムギに出現する分枝穂の型と出現頻度が,遺伝的背景や播種時期の違いによりどのように影響されるかを明らかにしようとしたものである.八倍体ライコムギ!系統と六倍体ライコムギ11品種・系統(Table1)を,5回の異なる播種期により栽培し,その結果出現した分枝穂の種類と頻度を調査した(Table2).分枝穂の種類は,穂軸分枝による分枝穂と小穂軸異常による分枝小穂に大別され,前者にはHay-fork形分枝穂,Y-fork形分枝穂,および止葉節分枝穂が見られた(Fig.1).また後者では出現部位を穂の基部,中央部,および先端部に分けて記録したが,基部に出現する分枝小穂の頻度が高く(Table2う,バナナ形双生小穂,対面双生小穂,密生分枝小穂,輪生小穂,角穂分枝小穂等の分枝小穂が出現した(Fig.1).分枝穂の多くは正常穂よつも一穏当たり小穂数および小花数が優り,着粒数が優っていたものは4品種・系統,劣っていたものは3品種であった(Table3).分枝穂の播種期別出現頻度は9月10日播種の場合が最も高く,2月13日および10月13日播種がこれに次ぎ,11月23日,12月24日播種の場合は低かった(Table2).9月播種の場合は幼穂形成期の日平均気温が約5℃の低温になること,2月および10月播種の場合もほぼ同程度の低温に幼穂形成期が遭遇すること(Fig.2)が分枝穂出現頻度を高くする原因の一つと考えられる.分枝穂の出現頻度は品種や系統により異なり,八倍体系統は六倍体系統よりもその頻度が高かった.また六倍体の4品種にはどの播種期の場合も分枝穂が出現しなかった.これらのことから,ライコムギには幼穂形成期の低温に遭遇することによって分枝穂を形成し易い遺伝的背景をもつものと,それをもたないものとが存在するように考えられた.しかし染色体構成や細胞質の違いと分枝穂の型および出現頻度との間には明瞭な関係は見いだせなかった.
- 1990-03-01
著者
関連論文
- ササゲの耐乾性 : 第3報 水分ストレスがササゲの葉の寿命におよぼす影響
- ササゲの耐乾性に関する研究 : 第2報 水ストレス下における葉の水分調節機能と光合成能の特性に関する.ササゲ, ダイズ, インゲン, リョクトウ間の比較
- 六倍体ライコムギにおける発芽と苗条の生長に対する塩化ナトリウムの影響
- ササゲの耐乾性 : 第1報 ササゲ(Vigna unguiculata(L.)WALP var.unguiculata)の吸水能力に関する研究
- 六倍体ライコムギの麦芽製造品質, とくにオオムギ, コムギ及びライムギとの比較について
- オオミノトケイソウ及びキイロクダモノトケイソウの幼木の生長及び塩蓄積に及ぼすNaClの影響〔英文〕
- タイ国北部における焼畑から常畑への移行過程に関する耕地生態学的研究 : 第3報焼畑において単作および間作栽培された作物の根系分布
- タイ国北部における焼畑から常畑への移行過程に関する耕地生態学的研究 : 第1報 地形と土壌及び土地生産性
- トウモロコシとダイズの単作と混作栽培における根系分布
- キュウリ種子の発芽に伴うジベレリン, アブシジン酸及びサイトカイニン様物質の変化
- 塩分濃度に対する六倍体ライコムギ, コムギ, ライムギおよびオオムギの子実収量の反応
- 異なる生育段階における六倍体ライコムギの耐塩性
- 塩分と温度が六倍体ライコムギの収量, 無機イオン濃度および生理に及ぼす影響
- 塩分および水ストレスが六倍体ライコムギの生長, 収量および生理的特性に及ぼす影響
- トウガラシの生育・収量に及ぼす異なる進行程度の水ストレスの影響
- 塩分ストレス下における六倍体ライコムギの乾物生産と無機イオンの体内分布
- ナガササゲの湛水に対する反応に及ぼす土壌消毒の影響
- トウガラシ4品種の生理的特性に及ぼす開花前の短期間水ストレスの後作用
- トウガラシの生長・収量に及ぼす, 異なる生育ステージにおける水ストレスの影響
- 仮想湿潤熱帯条件下における貯蔵ダイズ種子の劣化〔英文〕
- 組織培養下での不定芽形成を利用した、トウガラシ(Capsicum annuum L.)の放射線突然変異誘発 : M_1 世代に見られた変異体の解析
- トウガラシ(Capsicum annuum L.)子葉培養組織の不定芽形成能に及ぼすガンマ線の照射線量及び線量率の影響
- ダイズ種子のTTC呈色パタ-ン及び発芽率に及ぼす貯蔵の影響〔英文〕
- ナガササゲ(Vigna sinensis var. sesquipedalis)の生育収量に及ぼす短期間湛水処理の影響〔英文〕
- トウガラシ(Capsicum annuum L.)子葉培養組織の不定芽形成能
- シリカゲルによる乾燥がダイズ種子のTTC呈色反応,発芽,活力及び種皮裂傷に及ぼす影響〔英文〕
- シクマメ(Psophocarpus tetragonolobus(L.)DC.)の採種栽培試験
- タイ国北部における焼畑から常畑への移行過程に関する耕地生態学的研究 : 第2報異なる栽培様式下における作物生産性について
- ライコムギの播種期による分枝穂の出現頻度の差異とその型
- 熱帯農学の研究と国際協力
- 倍数性および染色体構成がライコムギ間交雑における交雑率とF_1植物の生育に及ぼす影響
- 短期間の水ストレスに対するトウガラシの反応
- 六倍体ライコムギの麦芽品質に関する品種間比較
- 「国際ライコムギシンポジウム」に出席して