トウガラシ(Capsicum annuum L.)子葉培養組織の不定芽形成能
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
トウガラシ品種"八房"を用いて,子葉培養組織の不定芽形成に及ぼす種々の要因について研究した。葉柄をつけた子葉を0.01〜1.00mg/lのインドール酢酸(IAA)またはナフタレン酢酸(NAA)添加MS培地で培養すると,どの濃度でも培養1〜2週間以内にカルスと根の移成が見られた.カルスは葉柄の切断面に,また根は葉柄の切断周辺部,葉柄周囲及び子葉の中肋部に形成された,IAAは比較的細長く,分枝の少ない根を誘導するのに対し,NAAは比較的太短く,分枝の多い根を誘導した.またオーキシン濃度が0.01mg/lから1.00mg/lへと高くなるに従って根の発生は多くなった(Table1).これらの培地では不定芽の形成は見られなかった.子葉培養組織を1〜7mg/lのベンジルアデニン(BA)またはカイネチン(K)添加MS培地で培養すると,どの濃度でも培養1週間以内で葉柄の切断面にカルス形成が見られ,培養2週間後には葉柄の切断周辺部に多数の不定芽原基が形成され,3週間後には不定芽が肉眼で認められる迄に発達した.継代培養後2週間で不定芽が伸長し,培養組織当たりの不定芽数が数えられるようになった.このとき培地にBAを3〜7mg/l添加した培地で培養した組織の不定芽形成頻度が最も高かった(Table2).KはBAよりも不定芽誘導効果が低かった.MS培地にBA 3mg/lとオーキシン0.01〜1.00mg/lを組み合わせた培地を作り不定芽誘導を調査した.これらの培地では不定芽の形成やその伸長を抑制する傾向が見られたが,カルスと根の形成が観察された.不定芽抑制効果はNAAの方がIAAよりも大きかった(Table3).播種後12日目の苗から採取Lた子葉培養組織において不定芽形成頻度が最も高く,それよりも日数の多い苗から採取した子葉培養組織は不定芽形成頻度が低下した(Table4).子葉の一部を勇除した葉柄づきの培養組織及び葉柄づきの完全子葉は,子葉のみまたは葉柄のみからなる培養組織に比して,高頻度に不定芽を形成した(Table5).またバーミキュライトにMS培養液の1/2濃度の液を加えた培地で発芽生長さ昔た苗から採取した子葉培養組織の不定芽形成頻度が最も高く,その頻度はMS培養液,KNOP培養液,純水の順に低下した(Table6).上述の諸条件を最適にした場合の子葉培養組織の不定芽形成頻度は90〜100%,また培養組織当たりの不定芽数は8.6〜11.9であった.これら培養組織をMS培地にBA3〜5mg/lとIAAまたはNAA0.5mg/lを添加した培地に移したとき,根の形成カミ見られ,7週間以内に完全個体が得られた.
- 日本育種学会の論文
- 1987-06-01
著者
関連論文
- 紅河デルタ村落における商品作物としての野菜栽培の現状と栽培面積拡大の制限要因
- 耐暑性トマトの生育, 収量および生理的特性に及ぼす温度と水ストレスの影響
- トマト品種の耐乾性の評価
- ベトナム紅河デルタにおける水稲収量に及ぼす冠水の影響
- ササゲの耐乾性 : 第3報 水分ストレスがササゲの葉の寿命におよぼす影響
- ササゲの耐乾性に関する研究 : 第2報 水ストレス下における葉の水分調節機能と光合成能の特性に関する.ササゲ, ダイズ, インゲン, リョクトウ間の比較
- 六倍体ライコムギにおける発芽と苗条の生長に対する塩化ナトリウムの影響
- ササゲの耐乾性 : 第1報 ササゲ(Vigna unguiculata(L.)WALP var.unguiculata)の吸水能力に関する研究
- 六倍体ライコムギの麦芽製造品質, とくにオオムギ, コムギ及びライムギとの比較について
- オオミノトケイソウ及びキイロクダモノトケイソウの幼木の生長及び塩蓄積に及ぼすNaClの影響〔英文〕
- Capsicum frutescens L.の南西諸島への伝播経路の推定
- リョクトウの光合成に及ぼすABA,エチレンおよび湛水の影響
- トマト 4 品種の生育, 収量および生理生態的特性に及ぼす水ストレスの影響
- リョクトウ(Vigna radiata Wilczek L.)の耐塩性に及ぼす窒素肥料の影響
- タイ国北部における焼畑から常畑への移行過程に関する耕地生態学的研究 : 第3報焼畑において単作および間作栽培された作物の根系分布
- タイ国北部における焼畑から常畑への移行過程に関する耕地生態学的研究 : 第1報 地形と土壌及び土地生産性
- トウモロコシとダイズの単作と混作栽培における根系分布
- Use of Natural Biological Resources and Their Roles in Household Food Security in Northwest Laos(Sustainable Agro-resources Management in the Mountainous Region of Mainland Southeast Asia)
- タイ在来キュウリの休眠打破のための物理的処理の効果
- キュウリ種子の発芽に伴うジベレリン, アブシジン酸及びサイトカイニン様物質の変化
- 塩分濃度に対する六倍体ライコムギ, コムギ, ライムギおよびオオムギの子実収量の反応
- 異なる生育段階における六倍体ライコムギの耐塩性
- 塩分と温度が六倍体ライコムギの収量, 無機イオン濃度および生理に及ぼす影響
- 塩分および水ストレスが六倍体ライコムギの生長, 収量および生理的特性に及ぼす影響
- トウガラシの生育・収量に及ぼす異なる進行程度の水ストレスの影響
- 塩分ストレス下における六倍体ライコムギの乾物生産と無機イオンの体内分布
- ナガササゲの湛水に対する反応に及ぼす土壌消毒の影響
- トウガラシ4品種の生理的特性に及ぼす開花前の短期間水ストレスの後作用
- トウガラシの生長・収量に及ぼす, 異なる生育ステージにおける水ストレスの影響
- 短期間の水ストレスに対するトウガラシの反応〔英文〕
- 仮想湿潤熱帯条件下における貯蔵ダイズ種子の劣化〔英文〕
- 組織培養下での不定芽形成を利用した、トウガラシ(Capsicum annuum L.)の放射線突然変異誘発 : M_1 世代に見られた変異体の解析
- トウガラシ(Capsicum annuum L.)子葉培養組織の不定芽形成能に及ぼすガンマ線の照射線量及び線量率の影響
- ダイズ種子のTTC呈色パタ-ン及び発芽率に及ぼす貯蔵の影響〔英文〕
- ナガササゲ(Vigna sinensis var. sesquipedalis)の生育収量に及ぼす短期間湛水処理の影響〔英文〕
- トウガラシ(Capsicum annuum L.)子葉培養組織の不定芽形成能
- シリカゲルによる乾燥がダイズ種子のTTC呈色反応,発芽,活力及び種皮裂傷に及ぼす影響〔英文〕
- シクマメ(Psophocarpus tetragonolobus(L.)DC.)の採種栽培試験
- タイ国北部における焼畑から常畑への移行過程に関する耕地生態学的研究 : 第2報異なる栽培様式下における作物生産性について
- ライコムギの播種期による分枝穂の出現頻度の差異とその型
- P39 レタス葉の水ストレス初期には光酸素ストレスが誘導される
- ドイモイ以降における紅河デルタ村落レベルの作付体系の変化 : ベトナム、ナムディン省コックタイン合作社の事例
- リョクトウ(Vigna radiata Wilczek)品種の生長, クロロフィル含量及び収量性に及ぼす高濃度炭酸ガスの影響
- 熱帯農学の研究と国際協力
- 東北タイにおける天水田稲作の技術変化
- 41. 中部タイ畑作地帯における作付多様性の評価(日本熱帯農業学会第97回講演会)
- 倍数性および染色体構成がライコムギ間交雑における交雑率とF_1植物の生育に及ぼす影響
- 短期間の水ストレスに対するトウガラシの反応
- 六倍体ライコムギの麦芽品質に関する品種間比較
- 「国際ライコムギシンポジウム」に出席して