東北地方におけるウスグロヤガおよびムギヤガの周年経過 : I. 発育経過および越夏状況
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概要
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岩手県盛岡市近郊において, ウスグロヤガおよびムギヤガの飼育実験および幼虫分布調査を行い, さらに主として岩手県, 山形県の高地で越夏成虫の潜伏状況を調査し, 次の結果を得た.1. ウスグロヤガの成虫は主として9月中旬に雌当り500卵内外を地表下に産む.ムギヤガの産卵数もこれに近い.幼虫の発生状況からみて, 両種とも半裸地状の場所に産卵する傾向があると考えられる.2. 越冬卵は翌春4月頃ふ化し, 以後の発育は高温下で早く進む.ウスグロヤガに関する実験では, 羽化までの発育に対する日長の影響は認められない.3. ウスグロヤガの幼虫は低地に発生し, イネ科以外の草本を好む傾向がある.一方, ムギヤガの幼虫は山地でも認められ, むしろイネ科を好食する.4. 羽化直後のウスグロヤガを12時間の日長下で飼育すると卵巣の発育が促進されるが, その効果は, 越夏の中期以後におけるほど顕著ではない.ムギヤガの卵巣発育も, 12時間の日長下で促進される傾向がある.5. 高山帯での越夏期間は, 岩手県の場合, ウスグロヤガでは7月下旬∿8月下旬であり, ムギヤガではこれよりやや短いようである.山形県での越夏期間は, 一般に, 岩手県に比較してやや長いと考えられる.6. 越夏成虫の性比は常に1対1に近い.越夏個体数は, 岩手県ではウスグロヤガの方がはるかに多く, 山形県では両種ほぼ同等である.ウスグロヤガの越夏は福島県でも認められる.7. 高山帯で越夏する成虫は, 一つの山塊においては高所へと集まる傾向があり, 多湿な場所や植生の密な場所を避け, 排水の良い裸地に堆積した岩石の間隙に潜伏している.
- 日本昆虫学会の論文
- 1982-06-25
著者
-
斉藤 修
中国農試
-
奥 俊夫
東北農業試験場:(現)果樹試験場盛岡支場
-
奥 俊夫
果樹試盛岡
-
布施 寛
山形県農業試験場庄内支場
-
千葉 武勝
岩手県園芸試験場
-
斉藤 修
東北農業試験場
-
布施 寛
山形県庄内病害虫防除所
-
奥 俊夫
東北農業試験場
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