幼児の数転換能力の獲得における数詞の役割
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概要
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本研究は, 集合や数記号から把握した数をそれぞれ別の媒体で表現することを数転換と定義した。これまでの幼児数概念研究では具体から抽象へという概念の階層構造から具体物集合と数記号の間に仲介として半具体物の挿入が提唱されていた。その一方幼児の発達研究では, 数転換に際して数詞の使用が有効であることが示唆されている。そこで本研究では幼児の数転換能力の獲得における数詞の役割を検討し, さらに半具体物の役割を考察することを目的とした。対象児は日本の2幼稚園に就園する3歳〜5歳児期 (月齢45〜82カ月) の幼児355人であった。調査課題は具体物, 数詞, 数図及び数字により構成された。得られた資料の分析結果は次の点を明らかにした。 (1) 数詞への数転換が最も早くに獲得され, 数図への数転換の獲得が最も遅れる。 (2) 数転換の際に数詞はピボットとして使用され, 具体物から数字及び数図への数転換に介在することが示唆される。本研究は数転換の獲得が具体物集合を命名することから始まり, そして数転換では数詞の役割が重要であることを示した。子どもは数図でも具体物集合でも集合として同様に扱う。従って, 子どもが具体物で数の知識を構成できるなら, 特に数図を導入する必要はないと考える。本研究ではこれまでいわれていた半具体物を具体物集合と数記号の間に特別に挿入させる役割は見いだせなかった。
- 日本発達心理学会の論文
- 1993-07-10
著者
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