発話生成におけるFiller処理のダイナミクス

概要

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我々は本当の意味での自然な発話,すなわちSpontaneous SpeechのみならずLife-like Speechを機械処理することを目標に掲げている. Life-likeな発話とは発話におけるBelievabilityの実現であり,これは従来の音声言語処理の目指す最適性の追求とは異なる方向性である.冗長語や言い直し,言い淀みなどは従来は文法規則からの逸脱であると捉えられており,従って発話生成モデルにおける冗長語などの処理についても,文法規則からの逸脱への対応として設計されることが多かった.これに対して我々は,文法規則主導とは異なるアプローチで自然な発話を生成するモデルを構築している.我々の発話生成モデルでは発話生成行為を基本的でかつ小さな単位の集合としてモデル化している.また発話生成行為はそれを取り巻く環境,もしくは状況に埋め込まれたものとしてデザインされている.現在のシステムにおける環境には話題に関する記述や時間領域における影響を反映する発話状況,すなわち先に発話された言葉の集合などがある.我々のモデルではこれら発話生成行為を取り巻く環境と発話生成行為の基本単位が局所的な相互作用を繰り返した結果,大局的にある種の合目的性を伴った発話が"結果的に組織化される"のである.本稿ではこの自然な発話を組織化する発話生成モデルにおける様々なFillerの処理,すなわち従来は規則からの逸脱として捉えられていた冗長語などの扱いとは異なった観点からのFiller処理を提案し,自然な発話の生成にFillerが重要な役割を果たし得ることを示す.なお,本稿で言うFillerとはそれ自体は命題情報を持たないフレーズや表現で,かつそれ自体で自立した表現が可能なものであり,ある種の認知的機能を帯びたものを指す.例としては発話中に現れる「あ,えっと,その,えー」などの表現があげられる.
1996-09-04

発話生成におけるFiller処理のダイナミクス

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