Tetracoccus soyaeによるグリセリンの酸化的代謝
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概要
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Tetracoccus soyaeは, 1961年上野, 大亦によって醤油諸味中より分離同定された耐塩性のホモ型乳酸菌であるが, カタラーゼ陽性で, 好気条件下によく生育し, 糖, アミノ酸の酸化的代謝が旺盛な興味ある乳酸菌である。しかし, Bergey's Manual第8版ではTetracoccus属の分類学的位置づけが充分でなく, 今後の研究が待たれている。本菌の好気的な糖, アミノ酸代謝については既に報告したが, 本報ではグリセリンの酸化代謝については既に報告したが, 他の乳酸菌と比較しつつ検討した。本菌のグリセリン資化は生育菌, 休止菌とも好気条件下でのみ認められ, 約80%の収率で酢酸が蓄積された。しかし, Streptococcus faecalisやPediococcus pentosaceusで報告されている乳酸やアセトインは認められなかった。乳酸は培養初期に僅かに蓄積されるが, すぐに消失し後期には認められなかった。酵母エキスの添加はグリセリンの酸化代謝を促進したが, 嫌気条件下では効果は無く, 又, フマール酸の添加効果も認められなかった。菌のグリセリン酸化代謝能及び catalase活性は, グリセリンに生育することにより非常に強まり, その誘導性のあることが判った。同時にグリセリン酸化代謝にcatalaseの関与が推察された。次にグリセリンの代謝経路を検討した。グリセリン生育菌の無細胞抽出液に, glycerol kinase, L-glycerol-3-phosphate dehydrogenase, triose-phosphate isomerase, glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseの存在を認め, 又, これら酵素はグリセリンにより誘導されることより, これら酵素がグリセリン代謝に関与することが推察された。又, 中間代謝産物として, L-glycerol-3-P, glyceraldehyde-3-Pの生成を酵素分析により確認した。これらの結果より本菌のグリセリン酸化代謝経路を次の様に考えた。グリセリンは先ずglycerol kinaseによりリン酸化されL-glycerol-3-Pになり, 続いてL-glycerol-3-P dehydrogenaseにより酸化されdihydroxyaceton-Pになり, triosephosphate isomeraseによりglyceraldehyde-3-Pになる。以下EMP解糖系の下部へ入ってピルビン酸を経て酢酸まで分解される。この代謝経路はSt. faecalisやPe. pentosaceusの経路とよく似ている。ただ本菌は好気条件下では乳酸の酸化的分解能が強く, この二菌のような乳酸の蓄積が見られない。L-glycerol-3-P dehydrogenaseはNAD(P)に連結せず, 酸素或は methylene blue, phenazine methosulfate, cytochrome c等を水素受容体となし得る。又, atabrinやquinacrineで阻害されることによりフラビン酵素(EC 1.1.99.5)であろう。従ってグリセリン代謝に好気条件が必要であるのは本酵素の酸素要求性のためであり, 又, 生成されるH_2O_2の分解のためにcatalase活性が増大するのであろう。
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1975-04-25
著者
-
川崎 東彦
大阪府立大学農学部
-
川崎 東彦
大阪府立大学大学院
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大亦 正次郎
大阪府立大学農学部農芸化学科
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大亦 正次郎
大阪府大・農
-
岡野 四郎
大阪府立大学, 農学部, 農芸化学教室
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岡野 四郎
大阪府立大学 農学部 農芸化学教室
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大亦 正次郎
大阪府立大学農学部
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川崎 東彦
大阪府立大学, 農学部, 農芸化学教室
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