Shizophyllum comuneのエタノール利用 L-リンゴ酸発酵におよぼすフラビンの添加効果 : 炭酸固定発酵に関する研究 (第28報)
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概要
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Shizophyllum communeは, エタノールから60%以上の高収率でL-リンゴ酸を生成するが, 前報において, そのoverallな反応は エタノール+2CO_2→L-リンゴ酸 ではないかと推論した. また最近, S.communeのグルコース培地に, リボフラビンから新しい誘導体が生成されることが明らかにされた. 本報では, エタノールからのL-リンゴ酸生成経路解明の第一段階として, 一般にアルコールの酸化に関与していると思われるフラビンの添加効果を調べ, 同時に添加されたフラビンのエタノール培地での挙動を追及した. 使用したフラビンは, Riboflavin (FR), Flavin 5'-Mononucleotide (FMN), flavin adenine dinucleotide (FAD), それにRhizopusの生成するRiboflavin 2', 5-cyclic monophoaphate (RCMP) の4種である. これらのフラビンの添加は, 培地中に最終的に蓄積されたL-リンゴ酸量に, ほとんど効果をおよぼさなかった. 培養終了時, 上記4種のフラビンのすべてから, グルコース培地に見い出されたと同じフラビンの新誘導体(X)の生成が確認された. 各フラビンのXへの転換率はFR>FMNとFAD>RCMP の順であり, FRからのそれは70%以上であった. FRの経時的変化をペーパークロマトで調べたところ, Xが検出される以前にR_f値がFRに近似の第2の未知誘導体(Y)が検出されることが判明した. そこでFRの添加効果を明確にするために, L-リンゴ酸発酵の経時的変化をコントロールと比較した. その結果, 培養中期ではFRの添加が, エタノール消費の促進, L-リンゴ酸生成の促進に効果的であった. そしてこの時期は, FRからXへの転換が顕著になる時期でもあった. 次に, L-リンゴ酸生成活性の異なる S. commune の2株, IAM No.9006株(A株)とIFO No.4928株を用いFR添加によるL-リンゴ酸発酵を経時的に比較した. その結果, 両菌株ともL-リンゴ酸生成とX生成のtime courseはよい対応性が認められ、 L-リンゴ酸生成活性の高いA株がX生成活性も高いことが明らかになった. 最後に, Xの添加効果を調べた結果, L-リンゴ酸生成に促進的に作用することが認められた. 以上の結果より, S. commune の生成するフラビンの新誘導体(X)は, L-リンゴ酸発酵, 特にその菌体外蓄積に重要な役割を演じているのではないかと結論した.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-08-25
著者
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