Schizophyllum communeによるエタノールと炭酸カルシウムからのL-リンゴ酸生成 : 炭酸固定醗酵に関する研究(第25報)
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概要
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Schizophyllum communeを用いて, 非炭水化物を原料とする有機酸の発酵生産を目的とした. まず, 本菌の非炭水化物利用能を調べ, 次にその中で最も優れていたエタノールからのL-リンゴ酸発酵に関して, その培養条件を検討した.非炭水化物として使用した低級アルコール, n-パラフインの中で, 本菌はエタノールを最もよく利用し, プロパノールがこれに次いでいた. 発酵生産物をペーパークロマトで調べたところ, L-リンゴ酸が主生成物で, 他にコハク酸, フマール酸, 乳酸も若干認められた. これはグルコースを原料とした場合のパターンと比べ, 大差はなかった.エタノールからのL-リンゴ酸発酵に関して, その培養条件を検討した結果, 次のようなことがわかった. 1) エタノールはその初発濃度を4g/100ml以上にすると, 菌体増殖, L-リンゴ酸生成ともに顕著に阻害したが, feedingを行なうことによりその阻害は緩和され, 特にL-リンゴ酸生成は大幅に増加した. 2) スクリーニングの結果, エタノールに適した菌株はS. commure IAM No.9006であり, エタノールに適した培地組成はエタノール1g, NH_4NO_3 0.05g(あるいはポリペプトン0.1g), KH_2PO_4 0.2g, MgSO_4・7H_2O 0.15g, KCl 0.025g, MnCl_2 0.13mg, thiamine 0.75μg, CaCO_3 1g, 水道水100mlであった. 3) 上記菌株, 培地を用いて, 添加エタノール1gから0.6g以上におよぶL-リンゴ酸を生成せしめ, 同条件でのグルコースからの生成量を約50%も上まわった. 4) この場合, 培地組成からCaCO_3を除くと有機酸の生成が認め難く, また有機物のbalance sheetは添加エタノール1gに対して, L-リンゴ酸, その他の有機酸, 菌体重量等の総計は1gを越えていた. 5) 以上の結果, エタノールからのL-リンゴ酸生成には, グルコースからの場合と同様, 炭酸固定反応が関与していると推論した.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1973-12-25
著者
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