Schizophyllum communeのエタノール利用L-リンゴ酸発酵におよぼすCO_2源, その他の化合物の添加効果 : 炭酸固定醗酵に関する研究(第26報)
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概要
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前報において, Shizophyllum communeがエタノールから60%以上の高収率でL-リンゴ酸を生成したと報告し, その生成経路に炭酸固定反応が関与していると推論した. 本報では, さらにL-リンゴ酸の収率向上をめざすと同時に, その生成経路の知見を得るべく, 炭酸固定反応, TCAサイクル, およびグリオキシル酸側路に関連する化合物の添加効果を検討した. 1) CO_2源の効果 炭酸カルシウムは, その添加量とL-リンゴ酸生成量との間に, ある比例関係の存在が認められた. 水酸化カルシウムを, 炭酸カルシウムの代わりにpH調整剤として用いても, L-リンゴ酸生成にその代用効果を果さなかった. またCO_2ガスの炭酸カルシウム無添加培地への通気は, 促進的効果を現わした. 2) TCAサイクル関連化合物の効果 クエン酸, コハク酸, およびフマール酸の添加は, いずれもL-リンゴ酸生成に無効であった. マロン酸の添加は, 認めうるほどの阻害を現わさなかった. 3) グリオキシル酸側路関連化合物の効果 グリオキシル酸, およびその前駆体であるグリコール, グリコール酸の添加は, いずれもL-リンゴ酸生成に無効であった. 酢酸の添加は促進的効果を現わした. 本菌のグルコース培地生育菌体に, malate synthase活性は否定的であることが判明しているが, この菌体を用いた二次的な培養により, エタノールからのL-リンゴ酸生成を調べた結果, 60%以上の収率で得られた. したがって酢酸の有効性は, それがL-リンゴ酸生成経路の中間体であるための結果と推論した. 以上の実験結果より, Schizophyllum commureによるエタノールからのL-リンゴ酸生成経路に, 炭酸固定反応の関与は確定的であり, TCAサイクルおよびグリオキシル酸側路の関与は否定的であることが示唆された. さらにグルコースからの場合との収支論的比較により, エタノールが2回の炭酸固定反応を経てL-リンゴ酸が生成される経路(1)が主経路ではないかと結論した. (1) C_2H_5OH+2CO_2→C_4H_6O_5
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-06-25
著者
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