Schizophyllum communeに存在するアルコール脱水素酵素とリンゴ酸脱水素酵素の共役反応 : 炭酸固定醗酵に関する研究 (第30報)
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概要
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我々は, Schizophyllum communeがエタノールをよく資化し著量のL-リンゴ酸を生成蓄積すること, ならびにその生成経路を培養条件下での結果から, エタノール+2CO_2→L-リンゴ酸と推定したこと, を既に報告した. 本報は, このエタノールからのL-リンゴ酸生成経路を酵素条件下で証明する第1報で, 特にエタノールの酸化とL-リンゴ酸の生成反応を, 無細胞抽出液を用いて検討した. エタノール酸化に関与する酸素として, NAD依存性アルコール脱水素酵素(ADH)[EC1.1.1.1]の存在を認めた. この場合, NADPはNADの代用にはならなかった. L-リンゴ酸生成に関与する酵素として, NAD依存性リンゴ酸脱水素酵素(MHD)[EC1.1.1.37]の存在を再確認した. この場合, NAD依存性のリンゴ酸酵素の活性は認められなかった. 当該MDHは, オキザロ酢酸のL-リンゴ酸への還元の活性が強く, その局在は同じ粗酵素液中にイソクエン酸脱水素酵素活性が認められなかったことから, 細胞質であることが示唆された. ともにNADを補酵素とするADHとMDHが, S. communeの粗酵素液中に見い出されたので, その粗酵素液中で両酵素反応の共役の有無を生理的pHにおいて検討した. その結果, ADHによるエタノールの酸化で生じたNADHは, オキザロ酢酸の添加でMDHにより速かにNADに酸化され, エタノールが過剰に存在すれば, 時間とともにNADHへの再還元が順調に起こることが, 実験的に証明された. ADHは細胞質に局在する酵素であり, 当該MDHも細胞質に存在する酵素と思われる点, また, ADH反応とMDH反応の酸化還元重電位(E_0')がそれぞれ-0.16ボルト, -0.10ボルトである点を考慮すれば, この共役反応がin vivoにおいてL-リンゴ酸生成方向に作動する可能性は充分ある. したがって我々は, エタノールからL-のリンゴ酸生成経路の最終段階はオキザロ酢酸の還元であり, そこにADHとMDHの共役反応が寄与している, と結論した.[figure] 加うるに, この共役反応の実験的証明は, アルコール代謝との関連においても意義あるものと確信する.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-12-25
著者
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