林木の受精機構に関する研究(I) : アカマツの生殖器官に存在する花粉管生長抑制物質
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概要
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アカマツの花粉, 雌花, 球果および胚珠に存在する生長物質について研究し, 受精遅滞との関係を考察した。1.花粉管の生長は花粉抽出物の中性区分よりも酸性区分で顕著に抑制された。2.花粉管の生長は胚珠あるいは珠心を含む培地で制された。3.ペーパー・クロマトグラフイーとアベナ伸長試験によつてしらべた結果, イソブロパノールアンモニア水で展開した場合, 花粉抽出物の酸性区分では, 少なくとも2種類の促進物質(Rf0.1〜0.3および0.4〜0.5)と2種類の抑制物質(Rfo〜0.1および0.7〜0.8)が認められた。雌花および胚珠抽出物の酸性区分における生長物質も花粉抽出物の場合と大体同様であつた。これらのうち, Rf0.4〜0.5の促進物質はインドール酢酸と推定された。Rf0〜0.1の抑制物質はブタノール-酢酸-水で展開した場合Rf0.4〜0.5に存在する抑制物質と同一のものであつた。4.ペーパー・クロマトグラフイーと花粉発芽試験によつてしらべた結果, イソプロパノール-アンモニア-水で展開した場合, 花粉抽出物の酸性区分では3種類の花粉管生長抑制物質(Rf0〜0.1,0.4〜0.5および0.7〜0.8)が, 雌花および当年生球果抽出物の酸性区分では4種類の抑制物質(Rf0〜0.1,0.1〜0.3,0.4〜0.5および0.6〜0.9)が認められた。花粉管生長促進物質はこれらの抽出物の酸性区分および中性区分には見出されなかつた。5.花粉管はRf0〜0.1および0.〜0.9の抑制物質に対しアベナ子葉鞘と同様に反応した。しかし, 高濃度のRf0.4〜0.5の促進物質(IAA)に対してはアベナ子葉鞘と反対に反応した。6.酸性区分における花粉管生長抑制物質は雌花および当年生球果で顕著に認められた。しかし, これらの抑制物質は, 1種類をのぞき, 胚珠では受精期に減少の傾向がみられた。以上の結果から, 花粉および胚珠に存在する花粉管生長抑制物質はマツの受精遅滞に重要な役割をはたしているものと思われる。
- 日本森林学会の論文
- 1962-02-25
著者
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