大山・蒜山地区のブナ林の結実と種子の稔性について

概要

論文の詳細を見る
1993年に大山・蒜山地区のブナ林で結実と種子の稔性を調査した。大部分の林分は豊作であった。未熟種子は6月に、成熟種子は10月に多く落下した。落下種子数および品質は林分によって差があった。5〜11月の落下種子の総数は345〜1,191個/m^2で、うち成熟種子は229〜984個/m2であった。落下種子の品質別割合は、未熟種子13〜36%、健全種子22〜55%、発育不全種子1〜23%、シイナ8〜38%、虫害種子2〜16%、鳥獣害種子0〜2%であった。ブナの生立密度の高い林分(標高880〜980m)の種子は稔性が高く、シイナや虫害が少なかった。標高の低いブナ林では虫害が多かった。1993年産の成熟種子は過去の豊作年の種子に比べて健全種子率がやや低く、シイナ率が高く、やや重量が軽い傾向がみられた。過去6回の豊作年における種子の品質と気象要素との関係を調べた結果、ブナの分布の下限地では、夏期の天候が種子の稔性・品賢に大きく影響し、平年に比べて夏期が著しく高温・少雨・多日照の年は健全率が低く、多雨の年はシイナ率が高い傾向にあった。
日本森林学会の論文
1995-05-01