カラマツの花芽の発育経過について
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概要
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1964年8月から1965年4月の期間に長野県で採取した試料について花芽の発育を調査し, 次の結果がえられた。1)雄花芽では8月上旬〜下旬に雄しべの原基が分化した。胞原組織は8月中旬より分化をはじめ, 9月中旬には葯が認められた。胞原細胞は8月中旬〜9月中旬の期間に数回分裂して, 9月下旬〜10月上旬に花粉母細胞に発達した。花粉母細胞は10月上旬に減数分裂をはじめ, 11月上旬には太糸期に達した。その後分裂は停止し, 第1前期太糸期で越冬した。花粉母細胞は翌年の2月中旬からふたたび減数分裂を開始し, 3月上旬〜下旬の前半に第1分裂中期像が観察された。そして, 3月中, 下旬に4分子が, ひき続き3月下旬〜4月上旬に花粉が形成された。花粉はその後, 4月上, 中旬に連続4回細胞分裂をくり返し, 成熟花粉となった。散粉期の花粉では2つの前葉体細胞と柄細胞, 中心細胞および花粉管細胞がみられる。2)雌花芽では8月中旬より苞鱗が分化をはじめ, 9月下旬〜10月上旬に種鱗の原基が形成された。雌花芽は種鱗形成期で越冬し, 翌年の3月下旬〜4月上旬に胚珠の原基が分化した。胚珠の原基は4月中旬頃珠皮と珠心に分化した。珠心の胞原細胞は開花期に分裂増殖して, 開花の後期頃胚のう母細胞に発達するようである。3)花芽の発育は地域や個体によって多少ことなる。北海道では長野県よりも初秋の発育が約20日早かった。また個体によって花部器官の分化時期に10日前後の早晩がみられた。4)花芽は雌雄とも, 8月中旬から9月下旬の期間に急速に生長した。その後10月下旬まで緩慢に生長を続け, 休眠にはいった。翌年の3月中旬からふたたび生長をはじめ, 開花期に急激に伸長した。雄しべ, 葯, 苞鱗も花軸とおなじような生長経過をたどる。胞原細胞は9月中, 下旬に急速に生長して花粉母細胞に発達した。10月上旬以降は細胞の大きさに差異がみられなかった。花粉は散粉期の直前に著しく生長した。種鱗は花芽分化の年にはほとんど生長しない。翌春, 開花期頃から急速に伸びはじめる。5)花芽は8月と9月の比較的みじかい期間に急速に発育して, 9月下旬には花粉母細胞および種鱗の原基が認められる。10月上旬には花粉母細胞の減数分裂がはじまる。したがって, 7月に分化した花芽は8月上旬から9月下旬の期間に花性が決定すると考えてよい。
- 日本森林学会の論文
- 1966-12-25
著者
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