Troma 1(ラット単クローン抗体)およびCAM5.2(マウス単クローン抗体)の組織における反応性に関する研究 : 正常妊娠および絨毛性疾患における組織学的trophoblastmarkerとしての検討
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概要
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trophoblastは栄養代謝学的に、内分泌学的に、そして免疫学的に興味があるのみならず、絨毛癌など絨毛性腫瘍の発生母地となり、腫瘍学的にも重要である。正常妊娠および胞状奇胎の着床部を組織学的に観察する際、絨毛表面を被うviIloustrophoblastの形態学的認識は容易であるが、脱落膜などに存在するnonvillous trophoblastを母体細胞と区別して認識することは困難である。著者らは、keratinを抗原とする二つの単クローン抗体(Troma 1およびCAM5.2)の組織における反応性を免疫組織化学的に観察し、正常妊娠および絨毛性疾患において組織学的なtrophoblast markerになりうるかを検討した。材料として、外科的に摘出された正常妊娠子宮41例、胞状奇胎子宮7例、妊娠性絨毛癌子宮2例、非妊娠性絨毛癌卵管組織1例、ならびに非妊娠子宮5例を用い、酵素抗体間接法により反応性を調べた。Troma 1の反応は凍結切片を用い、CAM5.2の反応はパラフィン切片を用い検討した。成績は以下の通りである。1)二つの抗体の各組織における反応性は全く同じであつた。2)非妊娠子宮体部組織において、子宮内膜腺上皮細胞、および子宮内膜被覆上皮細胞との反応性が認められた。3)正常妊娠着床部組織において、子宮内膜腺上皮細胞、villous trophoblast、およびcytotrophoblastic cell column、cytotrophoblastic shell、脱落膜などに存在するnonvillous trophoblastとの反応性が認められた。4)胞状奇胎組織において、子宮内膜腺上皮細胞、villous trophoblastおよび母体組織に向かつて増殖しているnonvillous trophoblastとの反応性が観察された。5)絨毛癌組織においては、周囲の宿主細胞と反応することなく絨毛癌細胞との特異的な反応が認められた。子宮内膜腺を形態学的に認識することは容易である。したがつて、二つの抗体は正常妊娠および絨毛性疾患において、組織学的なtrophoblast markerになりうると考えられた。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-04-01
著者
-
大橋 幸夫
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
金澤 浩二
琉球大
-
金沢 浩二
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
本間 滋
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
竹内 正七
新潟大学医学部産科婦人科
-
大桃 幸夫
新潟大
-
渡辺 重博
新潟大
-
笹川 基
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
内山 三枝子
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
渡辺 重博
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
大桃 幸夫
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
金沢 浩二
新潟大学医学部産科婦人科
-
本間 滋
新潟大学医学部産科婦人科
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