高日令マウス卵巣の器官培養

概要

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Rose の潅流式培養装置は従来の器官培養法に比して, 生体の器官・組織を非常に良好な培養条件の下で長期間培養出来る上に, in vitro において器官・組織の機能面の追求と同時に, 該器官・組織の中で生起しつつある形態的変化を, 細胞レベルで, 且つ生きているままの状態で観察することを可能ならしめた画期的装置である. 本装置を用いて生後24日目のマウス卵巣の器官培養を試み, 次の結果を得た. 1) 種々の発育段階にある多くの卵胞が発育するのを認めた. その中には, 幼若マウス卵巣の培養では見られなかった, 厚い顆粒膜細胞層に囲まれた発育卵胞が認められた. 2) 卵胞の一つに, antrum の形成を思わせる所見を認めた, しかし, この所見に関しては, 今後の検討が必要であると思われる. 3) 4個の卵巣に著明な細胞の outgrowth を認めた. この現象は, この日令の卵巣には, 組織に"固さ"が出て来ており, cellophane sheet による充分な卵巣の圧迫固定が出来ず, そのために起こる現象と思われる. 今後の改善を要する点である. 4)培養の全経過を通じて, 卵巣の組織・細胞の位相差顕微鏡による微細な観察が不可能であつた. 之は, やはり, この日令のマウス卵巣には, 組織の中に"固ざ"がでてくるため, Rose の chamber 内に生起する陽圧によつて, 微細な構造の観察可能な細胞層まで, 卵巣が充分に圧迫・固定されないためであると思われる. 今後の改善を要する点である. 5) 3)及び4)でのべた現象は, Rose の潅流式培養装置の器官培養法における特異的な地位を失なわせる問題であり, 高日令 (特に生後20日以上) のマウス卵巣を, Rose の潅流式培養装置を用いて器官培養するにあたっては, その圧迫・固定法に何等かの技術的工夫が必要であると思われる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1974-11-01

高日令マウス卵巣の器官培養

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