母体心疾患の妊娠・分娩および胎児に与える影響に関する統計的検討

概要

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昭和51年から56年までに当科において見られた心疾患合併妊娠およびその児について統計学的検討を加え,母体心疾患が児のoutcomeにもたらす影響について考察した.過去6年間の心疾患合併妊娠は54例でこれは全分娩数の0.9%にあたる。合併心疾患の内訳は,リウマチ性26例(48.1%),先天性26例(48.1%),その他の心疾患2例(3.7%)であり,従来の報告に比ベリウマチ性心疾患合併頻度の減少が明らかであった.母体心疾患のdecompensationが児のoutcomeにいかたる影響を持つかを考察するため,妊娠24週以後に分娩した44例を,妊娠中に循環動態のdecompensationを生じた群(悪化群)と,生じなかった群(非悪化群)に分類し,さらに心疾患を有さない対照群を同期間の当科分娩例より無作為に抽出した.以上3群に対し妊婦年齢,分娩週数,出生体重,SFD発生頻度,早産発生頻度,fetal distress発生頻度,1分後および5分後Apgar scoreについて検討を行なった.その結果,悪化群では非悪化群,対照群の両群に比べ有意に妊婦年齢が高く,分娩が早く,出生体重が低かったが,非悪化群と対照群の間には有意差は存在したかった.SFDおよび早産発生頻度は悪化群において高い値を示した.これに対してfetal distress発生頻度,Apgar scoreについては3群間に有意差は存在したかった.次に悪化群の低出生体重に関し分娩週数を独立変数,出生体重を従属変数とする共分散分析を行たったところ,分娩週数の補正を行なうと悪化群と非悪化群の間の出生体重の差は有意ではたくなることが示された.以上より,心疾患の合併が分娩および児に与える影響はdecompensationを生じるか否かにより大きく変化し,十分代償された例では対照と大差がたいこと,またdecompensationの結果分娩が早まる傾向が生じ低出生体重の欠きた要因とたっていることが考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1983-10-01

母体心疾患の妊娠・分娩および胎児に与える影響に関する統計的検討

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