チオロ型有機リン殺虫剤の活性化におけるグルタチオン S-トランスフェラーゼの関与
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概要
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Prothiophos oxonおよびそのS-アルキル同族体(S-メチル, エチル, ブチル体)をラット肝ミクロゾーム-サイトソール系中次の3条件下37℃で30分間反応させた.[○!a] NADPH, GSH無添加, [○!b] NADPH添加(S-oxide生成条件), [○!c] NADPHとGSH添加.反応後砂糖を加えて凍結乾燥し, 感受性高槻系イエバエに給餌し, 各条件下での反応混合物の殺虫効果をみた.各化合物の用量は.反応後残存するS-アルキルオキソンによる殺虫効果の発現にかなり時間がかかるよう各化合物のLD_<50>に応じ加減した.48時間までの殺虫効果の途中経過をみるに, S-メチル体の場合, [○!c]では[○!a]に比べ反応後のS-メチル体の量が約1/2にもかかわらず, 死虫率はほぼ同じで, 殺虫効果はS-メチル体によるだけでないことを示唆し, また[○!b]に比べ, S-メチル体の量がほぼ同じにもかかわらず, 死虫率が高いことは, 反応条件下S-oxideは生成しても分解しやすいが, GSHにより安定化した殺虫化合物ができていることを示唆している.また[○!c]からサイトソールを抜いた系では死虫率は減少した.他の化合物でも同様の傾向が認められた.このことはこれら化合物の殺虫効果に, ミクロゾーム-NADPH系による活性中間体S-oxideのほかに, GSH-グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)系が関与する新たな活性中間体の寄与を示唆している.同上のin vitro実験系に, 牛赤血球アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を添加して反応させたところ, 反応混合物のAChE阻害は, アルキル基の違いにかかわらず, [○!c]が高く, またGSHの量が多いほど高かった.GST活性の増大した抵抗性八千代系と上記感受性イエバエとに, 上記の反応混合物を与えた場合, [○!a]では抵抗性系の死亡開始は感受性系に比べ遅いのに対し, [○!c]では抵抗性系の死亡開始は早くなり, 長い時間に渡り[○!a]より高い死虫率を示した.感受性系では[○!a] [○!c]間の差は初期のみであった.以上の結果から, これら化合物はS-oxideを与え, これがAChEを阻害する一方, GSH-GST系により, GSHに抱合化された活性中間体を与え, このものもAChEを阻害し, 殺虫効果を呈するとの仮説を提示する.試験昆虫を供与いただいた正野博士と本山博士に感謝申し上げる.
- 日本農薬学会の論文
- 1991-08-20
著者
-
宮本 徹
東京農大生物応用化学
-
宮本 徹
東京農業大学農芸化学科
-
山本 出
東京農業大学
-
山本 出
東京農大生物応用化学
-
山本 出
農大
-
山本 出
東京農大 ・ 農化
-
Miyamoto Toru
Department Of Agricultural Chemistry Tokyo University Of Agriculture
-
宮本 徹
東京農業大学大学院農学研究科農芸化学専攻:東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科
-
宮本 徹
東京農業大学名誉教授
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