タバコモザイクウイルスに対するトマト品種の抵抗性(第6報) : トマイウイルス病に対するブラストサイジンSの効果
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概要
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トマトのTMV抵抗性を異にする2品種を用い,ブラストサイジンS(BcS)の葉面散布または茎,根からの吸収実験により, BcSの抗ウイルス性を検討した。トマト体内のTMV-OM(普通系統)の量はふつう化学定量し,一部の実験では生物定量した。1)接種と同時にBcSの0.5〜5.0ppm液を葉面散布し,以後5回継続して散布した。TMVの化学定量によると,低濃度(0.5〜1 .Oppm)散布ではウイルス量は対照の無散布区よりかえって増加した。高濃度(2〜5ppm)散布では,罹病性のF2でウイルス阻害度が40〜50%に達したが,抵抗性のZKでは同じ濃度液の散布でほとんど阻害がみられなかった。2)同じ材料でウイルス量を生物定量すると,やはり低濃度散布でウイルス量が増加する傾向があった。2〜5ppmの高濃度散布では,F2およびZKとも対照区よりウイルス量が減少し,その阻害度は40〜60%に達した。3) トマトの根からBcS液を吸収させると, 0.5ppm液吸収(体内濃度5μg/gトマト生重)ではF2, ZKとも薬害を生じた。しかしF2では0.1ppm液吸収(同上1μg/gトマト生重),ZKでは0.2ppm液吸収(同上2μg/gトマト生重)で,ウイルス阻害度がいずれも60〜70%に達した。4)トマトの側芽を接種1〜2日後に1日間0.1ppmのBcS液に浸漬し,その後砂土に挿木すると, F2,ZKともウイルス量が激減した。このときウイルス阻害度は90%以上であった。しかし接種3〜5日後の1日間BcS浸漬では,効果が少ないか,あるいは効果が全然なかった。5)以上の結果から, BcSの低濃度散布によるTMVの増殖促進,ウイルス量の化学定量と生物定量との関係,罹病・抵抗性両品種に対するBcSのウイルス阻害効果の相違, BcSのトマトでの吸収量と抗ウイルス性および薬害発生との関係などについて考察した。
- 近畿大学の論文
- 1980-03-15
著者
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平井 篤造
近畿大学農学部農学科植物病理学研究
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上村 仁一
近畿大学農学部
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平井 篤造
近畿大学農学部農学科・植物病理学研究室
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岡田 博
近畿大学農学部
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甲斐 務
近畿大学農学部
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前山 孝範
近畿大学農学部農学科植物病理学研究室
-
平井 篤造
近畿大学農学部
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