タバコモザイクウイルスに対するトマト品種の抵抗性(第8報) : スラブゲル電気泳動によるトマト葉蛋白の分画
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概要
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[Author abstract]Resistance to tobacco mosaic virus (TMV) was more induced by TMV-protein (TMV-P, molecular weight of the subunit 17,000) treatment than by nontreatment in tomato cultivar ZK which shows systemic resistance. In this report, quantative increases in the amount of proteins of tomato leaves by TMV-P treatment are presented. Two methods were used in TMV-P treatment. One is immersion method, in which carborundum abrasived tomato leaf disks were floated on 80 ppm of TMV-P solution for 2 days. In another method, called absorption method, tomato cuttings without roots were dipped into TMV-P solution. The leaf proteins were analyzed by SDS polyacrylamide slab gel electrophoresis. Coomassie brilliant blue R and silver stainings were used. Isoelectrofocusing (IEF) using ampholytes was also tried. By the immersion method, leaf proteins of tomatoes both non-inoculated and TMV-inoculated did not show any detectable alterations in the stained rates between nontreatment and TMV-P treatment. However, by the absorption method, protein fractions having RF values of 0.3 and 0.5 (molecular weight 50,000 and 30,000, respectively) were more stained by TMV-P treatment than by nontreatment in ZK both noninoculated and TMV-inoculated, but not in F2 (susceptible cultivar). In IEF, by the absorption method, basic and neutral protein fractions having isoelectric point of pH 8.2 - 6.3 were increased in the stained rates by TMV-P treatment in ZK, but not in F2.[摘要]1) タバコモザイクウイルスの蛋白部分(TMV-P)を浸漬法と吸収法でトマト体内に導入した。前者ではカーボランダムで傷をつけた葉をTMV-P液に浸漬した。また後者では主としてトマトの茎の切口から、TMV-P液を吸収させた。用いたTMV-Pは酢酸法で純化し、淡度は80ppmである。2) 以上の処理トマト葉の3,500G遠沈上清を、ミニコンB15で分子量15,000以下の蛋白を除去して濃縮し、これを試料として、SDS・ポリアクリルアミドスラブゲルにかけて電気泳動した。染色には常法のコマシーブリリアントプリュ-(CBB)染色のほか,最近開発された銀染色 (Ag染色)を用いた。3) CBB染色ではRF値の小さな蛋白分画、つまり高分子蛋白は染りにくい。これに対してAg染色の蛋白検出度は抜群で、高分子蛋白もよく染出された。4) 以上のほか、アンホラインを使用して等電点電気泳動 (IEF)を行なった。5) 染色したゲルはすべてデンシトメーターにかけ、吸光度 (OD)を測定した。かつRF値毎にまとめた各蛋白分画の吸光度曲線の面積積分値を出し、これの全蛋白の面積積分値に対する割合を求めた。すなわち吸光度 (蛋白強度)のかたよりが、どの蛋白分画に多く分布するかを調べた。6) SDS・ゲル電気泳動では、浸漬法でTMV-Pを処理したばあい、接種区・無接種区とも、罹病性 F2・抵抗性ZK両品種いずれにおいても、処理の影響はゲルの泳動パターンならびに吸光度面積積分値の分布の上からも、大きな変化を示さなかった。7) 一方、吸収法でTMV-Pを処理すると、とくにZKでは、接種・無接種区とも、処理によりある分画の蛋白の吸光度が無処理区より増加した。それはRF値で0.3および0.5付近にあり、分子量50,000および30,000付近の蛋白であった。8) IEFによると、吸収法によるTMV-P処理区で、ZK品種でpH8.2~6.3に等電点をもつ塩基性および中性蛋白群が、無処理区より増加した。9) 以上の結果から、TMV-P処理によって高まった蛋白分画と、トマト体内のベルオキシターゼ(PO)活性との関係について、主として考察した。
- 1982-03-15
著者
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