タバコモザイクウイルスに対するトマト品種の抵抗性(第9報) : 遺伝子を異にするトマト栽培種のペルオキシダーゼアイソザイムパターン
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概要
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[Author abstract]Induction of peroxydase (PO) isozymes (IZ) in tomato cultivars by TMV-infection and/or by an inducer treatment was investigated using 10% polyacrylamide slub gel electrophoresis. TMV-resistant tomato cultivars, selected from the cross between tomato (Lycopersicon esculentum) and L. pervianum or L. hirsutum, and the susceptible cultivar F2 were used. The inducer used was oligo imino amide (OIA) that is a quartmer of dicyan-diamide having a cytokinin activity. The electrophoresis medium (enzyme solution) was obtained from tomato leaves and stems by 1) homogenizing tissues and shaking the extract in a solution containing 1 M NaCl (so-called salt extracting enzyme) or 2) centrifuging small pieces of leaves and stems and getting a fluid from the intercellular spaces (so-called cell-wall bound enzyme). A large part of PO activity was located on chloroplasts as judged by the histochemical method. Seven to 12 IZs were detected on the gel using dianisidine diHCl as a substrate. In resistant cultivar ZK, which has a gene Tm-2^a (hetero), optical density (OD) at 440 nm of IZs 4 and 5 increased by TMV infection and OIA 100 ppm treatment. GCR 267 having a gene Tm-2^a (homo) reacted with the same rate as ZK. In contrast, other GCR cultivars having other form of genes, for example Tm-2, Tm-2^<nv>, or Tm-1, reacted less strongly, although the susceptible cultivar F2 did not react so much by the same infection and treatment. ZK showed top-necrosis by TMV-OM (ordinary strain) infection, GCR 267 the same rate of necrosis, while other GCR showed no symptoms or showed slight mosaic or brown spots. Susceptible cultivar F2 showed mosaic by TMV-infection. The increased rate of OD_<440> of POIZ, therefore, seemed to reflect the manifestation of necrosis. The increased PO mainly located on IZs 4 and 5, one part of these activities, if not all, seemed to contain nonchloroplasts PO activity. The relation between IZ patterns and gene action is discussed.[摘要]1) ポリアクリルアミドからなるスラブゲルを利用して、トマト茎葉のペルオキシダーゼ (PO)アイソザイム (IZ)を分析した。2) 用いたトマトの品種 (栽培種)は,抵抗性の瑞光 (ZK)および GCR系の4種で、これらはいずれもトマトと野生トマトとの種間雑種で、遺伝子組成は異なっていた。また罹病性品種福寿 2号(F2)はこれらの遺伝子をもたなかった。3) 泳動試料(粗酵素液)の抽出は種々検討した結果、次の2法が良好であった。a.塩溶出法: 1M NaClをバッファーに加えて茎葉をすりつぶし、その液を 30min振とうして濾過する。b.細胞間隙酵素追出しのための遠心分離法: 茎葉の小片にあらかじめバッファーを減圧滲透し、これを塩ビ製二重遠沈管 (Fig.3)に入れて遠心分離し、遠沈管の底にたまった液を用いる。4) その結果、成育旺盛なトマトでは、-極から+極にかけてほぼ7個のIZ群が見出された。かつその4, 5, 7群はさらに2~3に分かれ、合計12個のIZが認められた。これらのOD_<440>の吸収曲線をとり、その面積積分値から、その濃度を判定した。5) 抵抗性品種ZK(遺伝子 Tm-2^aヘテロ)では、TMVの感染および/あるいはOIA (抵抗性誘導物質、オリゴ・イミノ・アミノで、サイトカイニン活性を有する)処理によって、PO活性が増加し、とくにIZの4, 5分画でOD_<440>が無感染・無処理区より増加した。6) GCRに属する他の抵抗性品種のなかでは、ZKと同じ遺伝子をホモにもつ GCR267が、感染、OIA処理で活性が増加した。他の遺伝子をもつGCR系では、抵抗性といいながら、僅かな活性増加にすぎなかった。罹病性のF2(これらの遺伝子をもたない)は、感染によってOD_<440>は無感染区よりむしろ減少した。7) ZKはTMVの感染で頂端えそを生じ、GCR267も激しいネクローシスになる。他のGCR系は軽いモザイクか斑点を、また罹病性のF2はモザイクをそれぞれ生ずる。そこでPOIZの増加はトマト組織のネクローシスを反映するものと考えられた。以上の事実から、POIZとトマト遺伝子の作用との関係について考察した。
- 近畿大学の論文
- 1983-03-15
著者
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