タバコモザイクウイルスに対するトマト品種の抵抗性(第3報) : 環境制御下におけるトマトでの壊疽と萎凋の発生
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概要
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[Author abstract]Recently, tomato cultivars grown under the controlled environment (in greenhouse heated or unheated) showed the top-necrosis of the uppermost parts of stem and the wilt of plants which may be, in part at least, caused by the infection with tobacco mosaic virus (TMV). Relation between TMV concentration of tomato cultivars and under-ground temperatures, phenylalanine ammonia lyase (PAL) activity of infected cultivars, and water-absorption capacity of the cultivars were investigated. Roots of TMV-resistant cultivars, ZK (Zuiko), contained much more virus concentration than the leaves under low under-ground temperatures (10, 15, 20℃), even under high aboveground temperatures (23~33℃). Whereas, in susceptible cultivar, F2 (Fukuju No. 2), the leaves contained much TMV than the roots under the same conditions. Six to 15 days after TMV inoculation, PAL activity in resistant cultivar (ZK) increased over the value at the inoculation. The activity in susceptible cultivar (F2) was not altered throughout 21 days after inoculation. Calose reaction was detected in phloem and the adjacent tissues in stem by staining the cross section with aniline blue and by observing under fluorescent microscope. Water absorption capacity of F2 increased by 3 times by infection over that of noninfected plants. ZK, resistant cultivar, also absorbed much water by infection, but the rate was smaller than that in the susceptible cultivar. From these results, the occurrence of top-necrosis and wilt in tomato cultivars by TMV-infection is discussed.[著者抄録]TMVに対して抵抗性と罹病性のトマト品種(ZKおよびF2)を用い、地下部温度を10、15、20、25℃と定温水で水耕して調節し、地上温度は22~33℃の室温として、トマトの地上部および地下部のウイルス濃度がどう変化するかを定量した。またTMV感染によるトマトの頂葉部壊疽(TN)の出現の原因を明らかにするため、接種後時期を追ってPAL活性の変動を調べ、茎の横断面で節管部周辺でのカロースの反応を蛍光顕微鏡で観察した。最後にTMV感染トマトでの萎凋発生の原因を知るため、接種トマトの吸水力の強弱を実験した。1)抵抗性トマト品種 (ZK)では、地下部温度が10, 15 20℃で低温のときには、地上部温度がかなり高温でも、地上部の葉に接種したウイルスは地下部に蓄積し、地上部にはほとんど移動しない。罹病性トマト品種(F2)も地上部温度が高温ならば、地上部でウイルスがいちじるしく増殖する。2)抵抗性品種 (ZK)では、接種後6~15日目にPAL活性が接種直後よりも増加し、それ以後もとの値に戻る。罹病性トマト品種(F2)では接種後21日まで変化はなかった。3)トマト茎の横断切片をアニリン青で染色して蛍光顕微鏡で観察すると、師管部およびその周辺にカロースの反応が認められた。この反応はZK、F2ともみられるが、前者の方が反応部位の数や反応の強度が多くかつ強い傾向があった。4)接種トマトを根をつけたまま水に浸漬し、その吸水量を測定した。F2の罹病株は健全株に比して約3倍の吸水量の増加を示した。ZKでも程度は少なかったが、罹病株で吸水量が大であった。5)以上の結果から、ハウス栽培トマト品種でのウイルス量の増加、TNの発生、萎凋出現の原因などについて考察した。
- 近畿大学の論文
- 1977-03-15
著者
-
平井 篤造
近畿大学農学部農学科植物病理学研究
-
中井 順市
近畿大学農学部農学科植物病理学研究室
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沢田 学
近畿大学農学部農学科植物病理学研究室
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司城 敏昭
近畿大学農学部農学科植物病理学研究室
-
伍賀 富久美
近畿大学農学部農学科植物病理学研究室
-
伍賀 富久美
近畿大学農学部農学科・植物病理学研究室
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平井 篤造
近畿大学農学部農学科・植物病理学研究室
-
平井 篤造
近畿大学農学部
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