シバ(Zoysia japonica Steud.)の種子繁殖形質に関する種生態学的研究 : (4)代表的な栄養系からの種子の発芽反応
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概要
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発芽特性を異にするシバ種子について,休眠性との関連における発芽反応をさらに詳しく検討する目的で2・3の実験を行った。供試種子は,先に著者によって易発芽群(A),中間群(B),および難発芽群(C)として分類された地方集団からの幾つかの栄養系に由来し,約30〜36ヶ月齢を経ている。第1実験では冷温処理の温度を再検討した。その結果,10℃でも従来の5℃と同様の顕著な効果が得られ,15℃でも効果があった。これに基づき,以後の実験には10℃,20日間処理を採用した。第2の実験では,15〜30℃までの5℃きざみの置床温度に対する発芽反応を比較した。供試種子は既報の組合せ処理によって,適温置床(30℃)での一次休眠はいづれもほぼ完全に解消した。しかし,与えられた温度差に対する感受性は発芽難易群ごとに大きく異なり,C→Aの順に環境條件による発芽規則(いわゆる環境休眠,温度抑制)の作用を強く受けることが明らかにされた。第3実験では,不適当な置床條件がその後の発芽過程に与える影響を検討した。供試種子にはNaOHの単独処理を施した。A群に由来する種子は,この処理によって好適置床下で一次休眠がほぼ完全に解消した。不適当な條件での置床は発芽率を有意に低下させたが,これはその後の好適置床によって向上した。C群由来の種子は,この処理だけではその一部が休眠を解消するに止った。また,不適置床はほぼ完全に発芽を抑制した。しかし,この抑制もその後の好適置床によって急速に解消した。B群由来の種子は,両者の中間的な反応を示した。これらの実験に関する限り,二次休眠誘発の証拠はみられなかった。これらの結果から,A群由来の種子は発芽のタイミングを相対的に弱い一次休眠とゆるい環境休眠に依存しており,C群のそれは基本的には強固な一次休眠に依存し,これにきびしい環境休眠が加わること,そしてB群のそれは,中程度の両休眠によって種々に規制されるであろう,という一応の結論が導かれた。農学的ならびに生態学的見地から,これらの結果の含意を考察した。
- 岐阜大学の論文
- 1991-12-25
著者
-
松村 正幸
岐阜大学農学部付属山地開発研究施設
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松村 正幸
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
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車戸 憲二
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
-
西條 好廸
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
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西條 好廸
岐阜大学農学部
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松村 正幸
岐阜大学農学部
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