有用野草の播種増殖に関する基礎的研究 : X.クマイザサの実生10年植物についての2・3の観察
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概要
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この研究は既報のあとをうけて,約10年間栄養繁殖を続けてきたクマイザサ(Sasa senanensis Rehd.)の実生3個体Cl1.1〜Cl.3)について,その生長特性を記載することを主眼とした。併せて,幾つかの形質については幼齢期や成熟したササ群落のそれと比較した。1987年の5月〜10月に計9回,稈齢や葉齢を区別した地上部の諸形質について調査し,その後1個体(Cl.3)の全植物体を堀上げて地下部の調査に供した。個体当たりの総稈数は実生4年目と比べて著しい増加を示した。その増加率は約6〜15倍で,個体により差があった。しかし,稈の齢構成をみると,どの個体でも当年生稈の本数割合が低下し,2年生以上の稈数がほぼ釣合を保って,群落のそれに近づいていた。稈数の季節変化は,稈齢によって傾向を異にした。当年生稈は,長さ約45cm,基部直径約4mmで,それぞれ群落の約1/3及び1/2に相当した。当年生稈は,どの個体も稈当り約6枚の葉を着け,群落におけると同数であった。2年生以上の稈の着葉数は群落におけるよりも少なく,個体間にも差があった。期間中の葉の生存率は,当年生葉が最も高かった。葉面積は,1枚当たりでは稈齢とともに小さくなり,1稈当たりでは2年生稈が当年生稈の約2倍を示して最大であった。当年生稈の葉面積は,群落のそれの50〜70%にあたり,個体により差がみられた。Cl.3についての実測に基づき,過去3年にさかのぼる地下茎の水平分布を推定して,地上稈の位置とともに図示した。この図から,経年的な領域拡大過程や,地上稈萌出年次との関係が明らかにされた。最終的に行った器官別乾重の調査から,T/R=0.8,C/F=4.05が得られた。これらの数値及び上述の個別的な測定値から,供試植物の諸形質は,一部の例外を除いて,ササ群落のそれからなお大きく離れていることが推定された。既報と併せて,実生の生長過程を追跡し,一稔多年生であるこの植物の実生苗利用の可能性について考察した。
- 岐阜大学の論文
- 1988-12-25
著者
-
松村 正幸
岐阜大学農学部付属山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
-
西條 好廸
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
-
伊藤 恭子
日本植生株式会社
-
西條 好廸
岐阜大学農学部
-
松村 正幸
岐阜大学農学部
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