道路法面の植生管理に関する研究(I) : 冷温帯多雪域の高い盛土法面における10ヵ年間の植生の変化
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概要
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1.図-1および写真-1に示されるような高い盛り土法面における,緑化後10年の植生の推移について調査・検討した。この法面は中部山岳国立公園内に位置するため,緑化にあたっては***ージョンの防止効果を期待すると同時に周辺の景観との調和についても留意しなければならない。2.緑化後10年を通じて29種の野生植物の侵入をみたが,これらの植物間では種の交代があった。また,コミネカエデ・イタヤカエデ・ウリカエデその他の木本類,ヤマカモジグサ・ススキ等のイネ科草本類およびオオマツヨイグサその他の広葉草本類の侵入・定着も認められた。3.法面に導入されたイネ科草本は,播種翌年の生長が旺盛であるが,その後やや減少した。これに対して,ホワイトクローバーは初期の生長がやや劣るものの,その後増加する傾向を示した。緑化後10年目,すなわち1986年6月時点における法面植生の状態は次の通りであった。植被率82.8%,裸地率17.2%,イネ科牧草化率49.8%,マメ科牧草化率17.6%および野草化率(ここでは便宜的に侵入植物全てを含む)32.6%。また,当法面では植生の階層構造の分化が始まっているのが認められた。4.当法面の植生の状態を,種組成および積算優占度を用いた生活形組成から検討した。これは休眠型,種子散布器官型,地下器官型および生育型である。その結果,優占種群の交代および種の多様化の状況が明らかにされ,徐々にではあるが,遷移の進行が開始しているのが認められた。5.当法面植生の内,典型的植分間では,土壌水分条件・土壌の高熱損量・土壌pH等に差違が認められた。これに対応して,主要構成種群の組成および優占度に特徴が認められた。土壌水分条件が相対的に良い植分では,播種草種の生育が良好であるものの種組成は単純であった。この反面,水分条件の悪い植分では生育する植物の草生が劣るものの,種類密度比率は高くなる。したがって,このような植分か核となって植生遷移が進行するものと考えられる。
- 1987-01-10
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