ササ生地の植生管理に関する生態学的研究 : 3.クマイザサ地下茎の伸長と分枝様式
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概要
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クマイザサ地下茎の伸長に関わる節間長の周期性および分枝様式を検討した結果,仮軸分枝と単軸分枝の繰り返しによって地下茎が伸長することが明らかになった。地下茎は実生として発生した後,5〜6年間は仮軸型の分枝を繰り返すが,それ以降になると単軸型の分枝も行うようになる。仮軸分枝によって分岐した地下茎先端部の多くが稈として立ち上がり地上空間を充実させるのに対し,単軸分枝によって分岐した地下茎の場合は地下空間を長く伸長し生活領域を拡大させる役割を担っている。地下茎の全体的伸長は各節間の伸長の積み重ねにあり,その伸長度合と節数が年間の伸長量に関与している。地下茎の節閣長は毎年の伸長開始時および終了時で短く,中間では相対的に長くなっている。この節間長の長短には一連の周期性があり,日平均気温の高低の推移と比較的よく対応する傾向が認められた。1分枝茎当たりの節数は7〜123節と大きく異なるが,1年間に形成される節数は仮軸分枝茎で14〜28節,単軸分枝茎で49節前後と推定される。稈(地上茎)は伸長中の新しい地下茎の側芽からは萌出せず,伸長翌年以降の古い地下茎より萌出する。また,節によっては稈を萌出させる年次にずれがあり,分岐後3年以上経過した地下茎であれば年齢の新旧にかかわらず,どの地下茎も異齢の稈群を持っている。これは,群落維持のための危険の分散機構であると考えられる。
- 岐阜大学の論文
- 1990-12-25
著者
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