ササ生地の植生管理に関する生態学的研究 : 2.中部日本におけるササ属植物数種の分布
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概要
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本報告は,ササ資源の有効活用を図るための基礎として,チシマザサ・クマイサザ・チマキザサ・ミヤコザサおよびスズタケの,いわゆるササ類の分布と分布環境が中部日本,特に愛知・岐阜・富山三県においてどのようになっているか,また生育状況が生青地の環境条件とどのように対応しているかを検討したものである。調査の対象にしたのは,上記の各県内の国有林内に自生・優占するササ類である。これらの種についての分布状況を概括すると,以下のようになる。水平分布では,チシマザサおよびチマキザサが日本海型気候域に分布するのに対して,ミヤコザサおよびスズタケが太平洋型気候域に分布する。そして,両気候型の接する一帯を中心に分布するのが,クマイザサである。これを垂直分布でみるとミヤコザサが1000m以下に,スズタケが1400m以下に,チマキザサが1500m以下に,クマイザサが2000m以下に,そしてチシマザサが2400m以下に各々分布していることが明らかになった。しかし,この分布域は海抜高度に依存的ではなく,最大積雪深に規制されていることが理解された。そこで分布域を最大積雪深からみると,ミヤコザサが0.5m以下に,スズタケが1.6m以下にそれぞれ分布するのに対して,チシマザサは1.5m以上に,チマキザサは2.0m以上にそれぞれ分布する。そして0.7〜2.0mに分布域を持つクマイザサは,上記のササ類のうち最も広く分布する種といえよう。これらのササ類の分布は育地の最大積雪深と対応していることが判ったが,積雪深が稈密度,主稈長,地際での主稈径および地下茎の深さ等を左右しているとは,必ずしもいえないことが明らかになった。ただ,積雪深が大きいほど主稈長が短くなる傾向が若干見受けられたことと,種および育地の違いに関わらず主稈長が長いほど地際径も大くなる傾向が認められた。また,下刈り等の刈り払いの影響の残る人工林内で,相対的に稈長が低くなるものの,稈密度は逆に増加することが把握された。
- 岐阜大学の論文
- 1989-12-25
著者
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