チガヤ種内2型の比較生態 : (3)実生3年目群落の年生活環
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概要
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著者らは先に,成熟した群落における開花期が約1ヶ月早いことに基づいて,普通型(C型)チガヤから早生型(E型)バイオタイプを区別した。既往の野外調査から,その生育場所との関連において,後者は前者よりも放浪性が強いことが知られている。生育場所に対する適応性解明の一環として,両型の実生3年目の材料を用い,群落形成初期における季節消長,乾物生産とその器官別分配等を比較した。調査は,生育期間中に10回,それぞれ25cm方形区(深さ25cm)の4反復サンプリングにより実施した。E型では,4月初めの萌芽直後から多数の出穂をみたのに対して,C型では,ごく少数が約1ヶ月遅れで出穂した。すなわち,E型は出穂期が早いばかりでなく,それに至るまでの栄養生長期間も短かった。出穂したC型の穂は完全に不稔に終り,事実上無視しうる現存量であった。E型の穂は約80%の種実稔性をもち,穂重は方形区当たり約3.5g(5.4%)を占めて,稔実生産数は1穂当たり約200粒(96,000粒/m^2)と推定された。C型の総現存量は,春に低下後,急激に増加して8月末に最大に達した。E型は,生育期間中ほぼ直線的に増加を続けて11月末に最大に達し,C型の約1.5倍の現存量を示した。現存量の分配には,とくに夏期に大きな差がみられ,C型及びE型の8月末におけるT/R比は,それぞれほぼ1/1及び1/2であった。これには地下茎の重さが大きく関与していた。有性繁殖効率の近似値は,明らかにE型の方が大きく,高い移住能力をもつことが示唆された。栄養繁殖効率の近似値もまたE型の方が大きかったが,競争能力との関連を明らかにするには至らなかった。
- 日本草地学会の論文
- 1988-09-30
著者
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