ハチジョウススキ,オギ及びそれらの3x-,4x-雑種の生態的側面 : (1)株領域の拡大過程
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概要
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ハチジョウススキ(MISC)とオギ(MISA)との交雑に由来する3x-及び4x-雑種を株分けし,2m×2m間隔に定植して,株領域の拡大過程を両親種と比較した。雌親のMISCは,ススキ属唯一の栽培品種で二倍種,花粉親のMISAは,強固な地下茎をもつ野生,四倍種であり,ともに日本の在来イネ科草種である。定植後2年目にあたる1983年4月から11月まで,約20日おきに調査した。この約20日間に発生した苗条を同期萌芽稈群(shoot cohort)とし,稈数,生存率及び株面積を調査した。また,最終期株を構成する生稈数に対する同期萌芽稈群の寄与率と,最終株面積に対する寄与率を求めた。両寄与率間の関係を検討し,株形成における稈の分布習性を解明した。結果は,冬草種4株についての平均値で示した。MISCの萌芽は,生育期間を通じほぼ冬期に分散した。稈の分布習性は,概して補間的な傾向を示した。その結果,最終調査期の株は小型で,齢の多様な稈によって構成され,草型は叢状(bunch type)を呈した。2年目の生育期を終えた株の面積は約1,650cm^2で,年間の株面積拡大率は約2倍であった。MISAの萌芽は,MISCと異なり,早春(4月期)に集中した。株形成における稈の分布は外向的,進攻的な傾向を示し,萌芽早期から急激に株面積を拡大した。従って,最終株は老齢稈によって占められる割合いが高く,広い株領域内に稈が疎生する形を呈した。最終株面積は約30,000cm^2に達し,年間拡大率は約6倍であった。雑種のうち3xには,上記諸特性について,MISAの特徴が強く現われた。最終期の株面積は, MISAと同じく約30,000cm^2であるが,年間の拡大率は約12倍となった。4x-雑種には,萌芽稈の習性については両親種の特徴が共に現われ,株面積に関しては両親種のほぼ中間であった。期末の株面積は約4,400cm^2で,年間の拡大率は約3倍であった。上に述べた結果は,3xはMISCの1ゲノムとMISAの2ゲノムからなり,4xは両ゲノムをそれぞれ2個宛もつとする平岩らの仮説の妥当性を,生態的一面からも裏付けたことになる。株面積の拡大能力をひとつの指標として,4草種の野性の程度を,3x≧MISA>4x>MISCと位置ずけるとともに,新しい飼料植物としての3x-,及び4x-雑種の利用の可能性についても示唆を与えた。
- 岐阜大学の論文
- 1985-12-15
著者
-
長谷川 俊成
岐阜大学農学部山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部付属山地開発研究施設
-
西條 好迪
岐阜大学農学部山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部
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