チガヤ種内2型の比較生態 : (4)異なる温度条件下における普通型及び早生型チガヤの実生の初期生育
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概要
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著者らは先に,主として開花期の早晩に基づいて,チガヤの普通型(C)と早生型(E)とを区別した。その後,同型間には開花期のほかに,いくつかの生態的特性にも違いが明らかにされたことから,同型はそれぞれの生育場所に対する独自の適応の仕組をもつと考えられた。この適応性解明への基礎研究の一環として,今回の研究では,実生の生育における温度反応を比較した。C型及びE型チガヤの実生を,12時間変温の低温区(15〓20℃),中温区(2〓30℃)及び高温区(35〓40℃)で,無競争条件で育てた。第I実験では約35日目に,第II実験では約70日目に材料を堀上げ,各区それぞれ50個体について,器官別乾重その他を測定した。実験結果は,これらの温度区のうち中温区が,いずれの型の実生に対しても,最も好適な生育条件を与えたことを示した。そして,この好適条件に対して,それぞれの型が乾物生産に関して示した反応は異なっていた。すなわち,第I実験においては,おそらく種子重の違いに基づいて,E型はC型よりも明らかに大きな全植物重を示した。しかし第II実験においては,C型の地下茎重の急増が主因となって,この差は明瞭ではなくなった。このことは,新領域への移住能力を決定する最初の時期において,E型はC型よりも明らかに有利であること,しかし,もしC型が相対的不利益にも拘らず実生の定着に成功したならば,その後の生育においてE型に追いつき得ることを示唆するものと考えられた。一方,3温度区を通じての乾物生産の比較から,E型はC型に比べ,実生の生育を可能にする温度域が広いことが明らかにされ,両型の将来の地理的分布の可能性に対し,ひとつの示唆が与えられた。両実験を通じて,すべての測定値に大きな個体間変異がみられたことから,供試材料は同型とも遺伝的異質性がかなり高いと考えられた。
- 岐阜大学の論文
- 1989-12-25
著者
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