岐阜県の植生概観(その6) : シバ型草地に造成された人工草地の草生変化についての事例
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概要
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この調査は,シバ型草地を改変して造成された人工草地について,年次の経過に伴う草生の変化を明らかにすることを目的とした。調査の対象とした千町,猪の鼻,野麦及び青屋の4牧場は,乗鞍岳と御岳山とにはさまれて位置する高海抜の放校地である。その草地植生は,長期にわたる家畜の放牧利用のもとにシバ型の半自然草地として維持され,植物社会学的にはZoysia japonica-Geranium thunbergii Association (シバーゲンノショウコ群集)として位置づけられている。近年,これらの草地の多くの部分は牧草の導入によって人工草地化されたが,その時期(従って草地の令)や造成方法は4牧場それぞれ異なっている。この調査にはすべて全接法によるポイント法を適用し,シバの消長を中心に草種構成の変化を検討した。各牧場についての調査結果は次のように要約される。1)千町牧場(P-1) 1975年に把耕法によって造成された約0.5haについて,1980年以後の3年次にわたって調査した。この調査地はほぼ平坦な場所にあり,造成後7年余を通じて,人工草地としてすぐれた草生が維持されている。現在約10%の数度でシバの出現がみられる。これらのシバは相観的には全く目立たない存在であるが,牧草類とよく共存して草地植生を形成している。2)猪の鼻牧場(P-2) 1980年夏に火入れ・直接法によって造成された約4haの斜面草地について,造成直後から3年間にわたって調査した。この草地は人工草地への発達途上期にあり,全体として着実に牧草地化が進んでいる。斜面上部に前植生として存在したシバ群落は,大きな攪乱を受けずに温存され,これが中心となって牧草地の中に次第にモザイク状に分布する傾向を示しつつある。3)野麦牧場(P-3) 耕起法によって1970年に造成され,以後満10年を経た草地について調査した。牧草の生育は概して不良であり,斜面上部ではシバの数度は約60%,下部では88%に達した。これらのシバはその大半が他の草種を伴うことなく単独で出現し,草地のほぼ全面にわたって優占種としての地位を確立しつつある。相観的には,ほぼ前植生のシバ型草地に戻ったといってよい。4)青屋牧場(P-4) 耕起法によって約7年前に造成された約4haの斜面草地について調査した。波形の地形をなす当調査地では,表土の浅い凸部にはシバ型群落が,比較的表土の深い凹部には牧草が群落を形成して櫛目状に分布していた。両群落の移行帯にはシバと牧草との混生がみられた。以上に述べた事例は,山間地における今後の草地造成や管理のあり方に対して重要な問題を投げかけている。植生の変化を起す要因について,今後の研究が要求される。
- 岐阜大学の論文
- 1983-12-15
著者
-
長谷川 俊成
岐阜大学農学部山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部付属山地開発研究施設
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山田 良彦
岐阜大学農学部山地開発研究施設
-
西條 好迪
岐阜大学農学部山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部附属山地開発研究施設
-
松村 正幸
岐阜大学農学部
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