シバ(Zoysic japonica Steud.)の種子繁殖形質に関する種生態学的研究 : (2)種子生産性
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概要
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前報と同じ場所で,同じ材料について,1985年と1986年における種子の生産性を調査した。10cm×10cm内の出穂茎数,1穂あたりの着粒数,および稔実歩合を栄養果ごとに調べ,これら3要素を乗じて,単位面積(100cm^2)あたりの稔実生産数を推定した。結果は両年度を平均して示した。稔実生産数についての有意な差が,地方集団間にも集団内にも認められ,地方集団はこの形質に関していくつかの混果を含み,かつ集団としての特異性をもつことが明らかにされた。供試40集団は統計的にA〜Dの4群に大別された。A群は北海道の1集団からなり,他とかけ離れて多数の稔実を生産した(約600粒)。対照的にD群は九州南端からの2集団を含み,全く稔実を生産しなかった。これら両極端の間にあって,B群は北海道からの4集団と本州北端からの1集団からなり,200〜300粒の稔実を生産した。C群は広域からの残余の32集団を含み,その中から高海抜放校地亜群と,南九州亜群が区別でき,前者は100〜170粒,後者は50粒以下の稔実生産によって特徴づけられた。これらの群,亜群全体を通じて考えると,概して,北日本には稔実生産性の高い栄善果を高頻度で含む集団が多く,中部高海技地がこれに次ぎ,南西日本の集団は稔実生産性の低い栄養果を多く含む傾向が認められる。一方,この傾向に合わない集団の存在も指摘された。稔実生産の推定に用いた3要素の中で,出穂茎の密度が稔実生産数との間に極めて高い相関を示したことから,この形質が稔実生産性の変異に第一義的に関与すると考えられた。また,1985,1986両年の調査結果の間に高い相関がみられたことから,稔実生産性はかなり安定した遺伝子型一環境の相互作用をもつ形質であることが示唆された。最後に,場所を変えての同様の研究・観察の必要性が強調された。
- 岐阜大学の論文
- 1990-12-25
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