看護婦のインフォームド・コンセントの認識と役割行動に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1995年に医療法の改正が行われ,「医療従事者は,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない」というインフォームド・コンセント(以下ICと略す)の義務化が打ち出された.この度,ICにおける看護婦の役割の重要性に鑑み,N大学医学部附属病院の看護婦(士)を対象にICの認識と看護婦の役割行動に関する非構成的アンケート調査を実施した.対象者420名のうち有効回答416名(看護士11,看護婦405)で回収率99.0%であった. 回答者の最終学歴,年齢,臨床経験年数の3つは相互に強く関連し,かつすべてICとも関連していた.そこで本研究では最終学歴に着目して分析をした.また,勤務場所の内科系・外科系別の分析をも行った.今回のアンケート調査では,看護婦のICに対する認識と役割行動について以下の3点に集約することができた. 1)ICの認識については,「医療従事者側からの情報開示,患者側の理解,納得,同意,選択」を回答した割合が8割以上を占めていた.ICの目的は「患者の自己決定権を重視するため」と回答していた.短大卒以上と各種看護学校卒では,「患者の自己決定権を重視するため」,「法的根拠の目的(医療訴訟の対抗上)」,「治療内容の充実のため」の3つについてそれぞれに有意差が見られた. 2)ICは日本文化,精神風土に馴染みにくい理由として,「患者の医師依存傾向」,「医師のパターナリズム(父権主義,温情主義)」の回答の割合が高く,短大卒以上と各種看護学校卒では,「医師の認識不足」,「医師のパターナリズム」のそれぞれに有意差が見られた.また内科系と外科系では,「患者の医師依存傾向」に有意差が見られた. 3)ICにおける看護婦の役割行動は,「IC後の患者への精神的ケア」,「IC時に同席する」,「IC後の患者の理解度を確認する」の割合が高く,内科系と外科系では,「IC時に同席する」,「医師からの説明後,補足説明をする」,「説明内容を記載する」について有意差が見られた.In 1995, the Medical Law was revised, and the following description was added, making informed consent (IC) obligatory : " When providing medical care, people who are engaged in medicine should offer an appropriate explanation and make efforts to obtain the full understanding of people who receive medical care " . Considering the importance of the role that nurses play when obtaining IC, we carried out a non-structured questionnaire survey regarding IC and the role behavior of nurses at a hospital affiliated with our university. Effective replies were obtained from 416 (11 males and 405 females : 99.0%) of 420 subjects. A marked relationship was seen among their education level, age, and duration (years) of clinical practice. Among them, since the education level was closely related to the other two factors, close attention was paid to this factor in the analysis. An analysis according to the type of work (medical or surgical) was also performed. The results of this questionnaire survey could be summarized as follows in terms of the recognition of IC and role behavior. 1) Regarding IC, more than 80% of the nurses supported " The release of information by the medical staff and obtaining the full understanding, agreement, and consent of the patient " . Regarding the purpose of IC, 81.3% of the nurses " Attached importance to the right of patients to make their own decisions " . Significant differences were observed between the graduates of only junior colleges and graduates of various nursing schools regarding the reply rate of " Attached importance to the right of patients to make their own decisions " , " To obtain legal permission (to avoid medical suits) " , and " To improve the quality of treatment " . 2 ) Concerning the reason why it is difficult for IC to take root in Japanese culture, the reply rate was high for " The Patients tended to completely rely on the judgement of physicians " and " Most doctors take a paternalistic stance " . Differences were observed between the graduates of junior colleges and those of various nursing schools regarding the reply rates of " Insufficient recognition by physicians " and " Most doctors take a paternalistic stance " and between medical and surgical nurses regarding the replay rate of " The Patients tended to completely rely on the judgement of physicians. 3 ) Regarding the role of nurses in IC, the reply rate was high for " Provide emotional support after obtaining IC " , " Being present at the time IC is obtained " , " Confirm the degree of understanding of the patients after obtaining IC " . Differences were observed between medical and surgical nurses m the reply rate of " Being present at the time IC was obtained " , " Providing supplementary explanations after the physicians' explanation " , and " Making a written gist of the physicians' explanation " , but no significant difference was observed between the graduates of junior colleges and those of various nursing schools.
- 長崎大学の論文
著者
関連論文
- 公開講座の展開と評価 -「家庭における介護技術」坂道地域に住む人々への在宅支援-
- 在宅看護論実習前のロールプレイにおける看護内容評価と教育的効果
- 熱帯病の数学モデルの構築と予防制圧への応用
- 5章 運動と血清脂質,血糖値,血圧の変化(I部 地域のウエルネス運動)
- 離島集団検診における未受診者の課題
- 74 慢性閉塞性肺疾患患者の下肢筋力と運動耐容能、ADLとの関係
- 在宅酸素療法患者のADL評価とSpO2モニタリングによる生活活動調査
- 日本人成人男子の皮下脂肪厚3部位和 (上腕部, 肩甲骨下部, および腹部) と年齢からの身体密度の推定式の検討
- 看護学生のインフォームド・コンセントの認識と看護者の役割に関する研究 -臨地実習における意識の変化-
- 肺がん患者のインフォームド・コンセント(Informed Consent = IC) と看護婦の役割
- 精神看護学実習前後における看護学生の意識変化に関する研究
- 成人男性における身長と体重から計算した各種肥満度の妥当性 : 水中体重秤量法を外的基準として
- 離島集団検診における未受診者の課題
- 熱帯病の数学モデルの構築と予防制圧への応用
- 妊婦HIVおよびクラミジア・トラコマティス抗体スクリーニング体制の確立 : 長崎方式による取り組み
- 成人女性における身長と体重から計算した各種肥満度の妥当性 : 水中体重秤量法を外的基準として
- 日本人成人女子の皮下脂肪厚3部位和 (上腕部, 肩甲骨下部及び腹部) と年齢からの身体密度の推定式の検討
- 病院の空調設定と患者の温冷感・適応行動
- 内科治療領域における臨地実習の展開と学生による自己評価
- 呼吸リハビリテーションを継続している呼吸器疾患患者のリハビリテーションに関する知識と行動
- 看護学生のインフォ-ムド・コンセント(IC)に関する意識調査 -実習前後における意識変化-
- 228 Shuttle Walking Testの慢性呼吸器疾患患者における運動耐容能評価としての有効性
- 看護学生に対するB型肝炎ワクチン接種成績
- 医学生と看護学生の合同演習前後での医師・看護師に対するイメージの変化
- 疾病・健康の概念と看護の役割
- 7 離島における母子保健推進システム事業の実際(III 地域医療)
- 549 地域在宅女性における身体機能の加齢変化
- 看護婦のインフォームド・コンセントの認識と役割行動に関する研究
- 8章 地域における運動実践と健康増進の支援(I部 地域のウエルネス運動)
- 大学病院看護師のバーンアウトスコアと東大式自記健康調査票(THI)成績
- 長崎県の介護保険の現状と未来 -第38回長崎県公衆衛生研究会シンポジウムの記録概要-
- インフォームド・コンセント普及阻害要因に関する社会医学的考察
- Health Transition(健康転換)構造の解明(平成7年度プロジェクト研究報告(保健学部・保健学研究科),研究助成金による成果紹介)
- タイにおける HIV/AIDS 流行の現状 : 行動疫学調査と血清疫学調査の連携の重要性
- 地域の中高年女性における肢不自由の実態に関する研究
- 「最終講義」 "いのちの看とり-がん看護を通して"
- 肺がん患者からの質問と看護師が必要と認識する患者教育
- 肺がん患者の学習ニーズに関する研究
- 外来における頭頚部がん患者, 家族の看護に関する研究
- 「がん看護特論」の授業概要と看護学生による授業評価
- ''I Can Cope''プログラム 米国・ミネソタ視察研修に参加して
- 合同模擬演習に対する看護学生と医学生の捉え方の相違 -合同模擬演習後の自由記載の分析から-
- 模擬患者(SP)を導入したロールプレイ演習に対する看護学生の評価
- 序(I部 地域のウエルネス運動)
- 健康運動教室への参加がもたらす精神的効果について
- 刈払機使用作業者の冷水浸漬後皮膚温回復率の個人内変動
- 10章 健康文化と長寿少病社会(I部 地域のウエルネス運動)
- 西ジャワ・スンダ農民の仕事 : その季節による変動と性・年齢による差異(西ジャワ・プリアンガン地方の健康・生態・人口)
- 熱帯病情報ネットワークの構築とその応用 研究集会報告 9 保健指標の地理情報システムの一例 -WebGISによる視覚化-
- 寄生虫疾患の環境における流行要因研究集会報告 6 文化・人間行動と環境と感染症流行
- 投稿 ナースのがん告知に関する意識調査
- 看護学生のインフォームド・コンセント(IC)に関する意識調査 : 実習前後の意識変化
- 3 緩和医療とターミナルケア(III 地域医療)
- 栄養指導による慢性便秘患者の栄養素摂取量変化
- 慢性便秘女性患者の食生活と食物繊維摂取量
- 大学病院看護婦の年齢別THI成績
- 一般健康質問票(General Health Questionnaire)調査からみた保健婦と看護婦のメンタルヘルス
- 1967年と1988年における中学生の「食べ物」に対する意識とその格差